職人技のつながりと結晶「和蝋燭」・映画『炎はつなぐ』を観る

 昨日、都心まで出掛ける用事があったので、現在、東中野ポレポレで公開されている映画『炎はつなぐ』を観た。

     

 僕たちが普段目にしているのは洋蝋燭である。これは綿糸を芯にして重油を精製したパラフィンなどの原料を型に流し込んで成形したものである。
 この映画は、それとは異なる日本の伝統工芸品としての和蝋燭にスポットを当て、それが数々の職人たちの技の集約として、どの様に造られるかを映像化したドキュメンタリー映画である。

 パンフレットには、次の様に解説が記されている。
「1本の和ろうそくができるまでには、全国の職人たちの技がった。様々な技術がつながっていく果てに、灯るゆらぎの意味とは?」
「本作は、写真家としてこれまで二十数冊の写真集や著書を出版し、『水になった村』『オキナワへいこう』などのドキュメンタリー映画を製作・監督してきた大西暢夫の長編ドキュメンタリー映画の最新作。ライフワークとして15年以上にわたり取材を続けてきた日本全国150カ所以上の職人たち中から30カ所に絞り込み長期取材を敢行、最終的に14の職人たちの仕事を映画にまとめた。」
「お蚕さんと呼ばれる養蚕農家、蝋の原料となるハゼの実を収穫するちぎりこさん、ハゼ蝋職人、藍染職人、藍染用の藍を生産するすくも職人、和紙の原料であるミツマタを栽培する農家、和紙職人、和紙職人が漉いた極薄の和紙を使って金箔を打つ金箔職人、仏具に金箔を漆で貼り高級仏壇に仕上げるヌッシャと呼ばれる塗師、その漆を集める漆かき職人、灯芯草から和ろうそくの芯をとり出す灯芯引き職人、灯芯を燃やして煤を集めて墨を作る煤職人、蚕からとった生糸を何重にも重ねて真綿の布団を作る真綿職人。そして、こうした職人たちの手を経て集められた材料を使い1本の和ろうそくを作る和ろうそく職人まで、日本の技術と文化を底辺で支えてきた伝統工芸の職人技が、謎解きのようにつながり、最後に和ろうそくの炎のゆらぎの意味が明かされる。」

     

 この映画、和蝋燭を作るまでに、太陽や自然のエネルギーから生みだされた植物を利用し、様々な職人たちがそれぞれのパーツを作り、その過程で出る廃材も再利用され、『循環するなかで生みだされる日本の伝統工芸品』として、どのように今も息づいているのかを記録した映画だった。

     

     

 登場する職人たちの多くは高齢者である。祖父や親から伝承された手作りの技を、ひたすらにつないでいる姿に感動を覚えながら、このようにして和蝋燭が存在するのかと驚かされる映像の連続だった。