町田のソメイヨシノもやっと蕾がほころび始めて

 昨日まで雨続きの寒い日だったが、やっと今日は晴れ間が出て暖かくなってきた。
 東京の桜の開花は、当初は18日という予想もあったが、それ以降、寒さが続いてまだ開花宣言がされていない。
 先ほどのニュースでは、29日が開花宣言できるだろうと気象庁の発表。
 では、町田のソメイヨシノの蕾は? と思って、夕方、近くの小学校のグランド脇の桜の樹を見に行ったら、やっと蕾がほころび始めていた。

   

   

   

   

 町田市では、桜の名所の尾根緑道や恩田川の「桜まつり」は、今週末の30日と31日を予定している。今年は、満開にはちょっと早い日程になってしまった。

ETV特集『個人的な大江健三郎』を観る

 昨年11月に放送されたNHKETV特集『個人的な大江健三郎が、今月16日の深夜に再放送されたものをNHK+で見つけて観た。

     

     

 その中で8人の人が、大江健三郎の作品に触れて、それが自分にとってどの様な影響を受け現在に至っているかを語っていた。
 登場人物順に紹介すると
・鹿児島在住の詩人・奥山紗英さんは『セブンティーン』
・元乃木坂46の俳優でありタレントの齋藤飛鳥さんは『飼育』
・シンガーソングライターのカガジカオさんは『芽むしり仔撃ち』
・2005年に芥川賞を受賞している仲村文則さんは『個人的な体験』
・「この世界の片隅で」の漫画家・こうの史代さんはヒロシマ・ノート』
・戦時下のキーウで生活するウクライナの国民的作家・アンドレイ・クルコフさんも『ヒロシマ・ノート』
・栃木県宇都宮在住の美容師・川上利勝さんは『洪水はわが魂に及ぶ』
・2011年芥川賞を受賞した朝吹真理子さんは『新しい人よ目ざめよ』

 それぞれが、大江作品との出会いと、それが如何に自分の人生にとって大きな気付きとなり、現在の自分に影響をもたらしているかを熱く語っていて興味ある内容だった。

     

 放送の最後に大江の言葉『文学は根本的に人間への励ましをあたえるものだ』をテロップで紹介していたが、確かにそうだなあ~と・・・。

 実は僕にとっての大江健三郎作品との出会いは、十代後半での『飼育』『芽むしり仔撃ち』だった。
 その頃、僕は川崎市の文学同好会「ぼけの会」で、月三回(10日・20日・30日)の例会に参加して読後感想を、会場としていた喫茶店閉店時間までねばり語り合っていたことを思い出した。
 この放送を観て、当時、同好会が発行していた同人誌を押し入れの奥の段ボールに収めているのを思い出した。

     

 かなり古くなってシミが浮いている同人誌をめくって、当時の仲間たちは「いま、どうしているだろう」と名簿を見るが、50数年前のことで、かすかに記憶に残っている人は2~3人、あとは定かでない。
 急に、『芽むしり仔撃ち』をもう一度読んでみたくなって、いま、読み始めている。

     

 

原田マハ著『板上に咲く』を読む

 新聞の書籍広告の原田マハ3年ぶり長編アート小説がついに単行本に!」という文字が飛び込んできた。

     

 そしてネット検索した書籍説明には、
──
「ワぁ、ゴッホになるッ!」
1924年、画家への憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功
しかし、絵を教えてくれる師もおらず、画材を買うお金もなく、弱視のせいでモデルの身体の線を捉えられない棟方は、展覧会に出品するも落選し続ける日々。
そんな彼が辿り着いたのが木版画だった。彼の「板画」は革命の引き金となり、世界を変えていくーー。
墨を磨り支え続けた妻チヤの目線から、日本が誇るアーティスト棟方志功を描く。
──
と、書かれている。

 原田マハさんは、自身がキュレーターやカルチャーライターとしての経験もあり、美術に造詣が深いこともあって、原田マハだからこそと言える、史実を基にして深みのあるアート小説の数々を生み出している。
 アート小説では、ゴッホの壮絶な人生を描いた『やゆたえども沈まず』や、アート史上最大の謎とも言われる「ゴッホの死」を題材にしたアートミステリーリボルバー、国連本部のロビーに飾られていたピカソの名画「ゲルニカ」を題材にした『暗幕のゲルニカアンリ・ルソーの絵画を題材にした『楽園のカンヴァス』、松方コレクションを題材にした『美しき愚かものたちのタブロー』など、僕は感動した原田マハさんのアート小説として記憶にあるし、読み終わって期待を裏切られたことがない。
 今度は、「版画家の棟方志功か」「ゴッホになるッ!と言って、ゴッホを超えて、世界のMUNAKATAになった棟方志功」が題材。これは、早速読もうと思った。

 この物語も、僕の期待を裏切らなかった。
 妻のチヤの献身的な生き方が凄い。棟方を信じ、棟方が目指すものに、何があっても最優先する姿。このチヤがいたから「世界のMUNAKATA」になったと納得する内容だった。それは、ゴッホを誰よりも理解し支え続けた彼の弟・テオにも通じる生き方なのだ。

 そう言えば、世界的な植物学者・牧野富太郎博士にも、彼を支えた妻・壽衛(すえ)がいたし、偉人の陰には必ずそれを支える人が寄り添っている。

 機会を見つけて、棟方志功を見いだした柳宗悦が創設した、都心の駒場にある「日本民藝館」に行ってみようと思った。

3月17日のファーム町田店「春のイベント」

 三重県ヤマギシの村・美里実顕地の販売所で好評だという「もちランチ」という企画を、ファーム町田店でもやってみたいとなって、17日の日曜日、美里実顕地の餅製造チーム6人が来てくれて「春のイベント・もちランチ」をやった。

     

 初めての企画、朝7時からみんなで「こうしたいい、この方がお客さんが落ちついて食べられる、でも、ここにビニールを張った方が餅が冷めない・・・」などなど知恵を出し合って会場を準備。

     

 開店の10時頃になってきたら、春の陽射しはあるのだけれど風が吹き出すが、餅つき開始。

     

     

     

 搗き立ての餅で、ぜんざい、雑煮、きなこ、のり、クルミ大根おろし、餅ピザ、さらに、草餅やチョコレート餅など炭火で焼いたお餅の食べ放題だ。

     

 「お餅の食べ放題? そんなに食べられないワ~」という人には、店内で搗き立ての「白もち」をお持ち帰りように格安2個100円で販売。

     

     

 午後1時まで、お餅好きのお客さんは、時折吹く突風にも負けず、餅バイキングを堪能していた。

 特に、ワタナベ君がお母さんから伝授され、何度も試食を繰り返したという「餅ピザ」は、最後にデザート的賞味で大好評だった。

     

 

3月に入って読んだ2冊の文庫本

 最近、TVドラマは日曜日夜のNHK BS『船を編む~私、辞書つくります~』だけは観ているが、それ以外はほとんどスルーして、読書の時間にしている。番組時間に拘束されることなく、いろいろな作家の世界に浸る方が、なんか自由だなあ~と読書虫が囁いている。
 そんなことで、3月に入ってから2冊の文庫本を読んだ。

 

◇高田郁著『契り橋 あきない世傳金と銀・特別巻上』を読む
 高田郁さんの江戸庶民物語『あきない世傳 金と銀 』シリーズは、江戸時代に「買うての幸い、売っての幸せ」をモットーに、呉服商を営む女商人の物語なのだが、2022年の夏に最終巻の13巻が終わって、昨年9月にその特別巻(上)が出て、今回、特別巻(下)「幾世の鈴」が出た。

                 

 僕は高田郁さんの江戸の風情描写が好きでシリーズを読んでいたのだが、このシリーズもこの特別巻(下)で最後だと知って、早速読んだ。                 
 前回の特別巻(上)では、『あきない世傳 金と銀 』シリーズに登場する4人を主役に据えた4つの短編集だったが、今回の特別巻(下)では、3つの短編集。
 読者なら気になっていた主人公・幸の妹・結のその後や、五鈴屋の暖簾が100年続いて、次の百年に繋いで行く決意などが描かれていて、ホッとしながらこのシリーズを締めくくることができる内容だった。
 蛇足になるが、空に飛ばす凧(タコ)のことを、関西では(イカ)と言っていたことは知っていたが、その漢字が「紙鳶」と「紙のトビ」と書くことや、ユキヤナギのことを「小米花(こごめばな)」と言われることも、今回、これを読んで知った。確かにユキヤナギの小さな白い花々は「小米花」と呼ぶに相応しいかもしれない。

 

◇河崎秋子著『鳩護(はともり)』を読む
 前にも書いたけれど、直木賞を受賞した北海道の別海町出身の作家・河崎秋子さんの『ともぐい』を読んだ以降、彼女に興味を持って、『土に贖(あがな)う』『鯨の岬』『肉弾』『締め殺しの樹』『颶風(ぐふう)の王』を読んだ。
 だいぶ河崎秋子ワールドにハマっていたけれど、彼女と一緒に今回の直木賞を受賞した万城目学という作家の『八月の御所グランド』も読んでみようと、ブックオフに寄ったら、その前に河崎秋子さんが昨年文庫でだした『鳩護』が目に止まって、「これはどんな内容なんだろう」と、またまた興味が湧いて買ってしまった。

                

 この『鳩護』は、前に読んだ作品とはだいぶ違う。
 河崎さんの人間を含めた〝生きとし生けるもの〟の命のやり取りがリアルに描かれた骨太な作品とは違って、物語の舞台も北海道でなく東京で、出版社勤務のアラサーの女性が主人公。相手の生き物も、熊や鹿などでなく、街中の公園でよく見かける「鳩」。
「へぇ~、こんな題材も、河崎さんは書くんだ」と思いながら、ファンタジーぽっい物語の展開に、ついつい引きずられて最後まで読んだ。
 『ともぐい』や『締め殺しの樹』や『颶風の王』で、かなり感動的ショックを感じていた僕としては、「河崎さん、何をこの作品で言いたかったのかな?」と未消化の部分はあるが、物語としてはそれなりに面白かった。

尾根緑道の桜並木沿いに「菜の花」が咲き出した

 今日は朝から冷たい雨。
 午後になって雨が止み、少しの時間、陽射しも。


 我が家から歩いて15分程のところの、桜の名所「尾根緑道」の桜並木脇の菜の花畑。

 今年もきれいに咲き出した。

     

     

     

 菜の花が見上げて、開花を待っている桜・ソメイヨシノの蕾はまだ固い。

     

     

 

河崎秋子著・文庫『颶風(ぐふう)の王』を読む

 『ともぐい』直木賞を受賞した北海道の別海町出身の作家・河崎秋子さんに興味を持って、短編・中編を収録した文庫『土に贖(あがな)う』新田次郎文学賞を受賞)と、文庫『鯨の岬』(ここに収録の「東陬(とうすう)遺事」で北海道新聞文学賞を受賞)を読み、さらに、『肉弾』大藪春彦賞を受賞)と、前回の直木賞候補になった『締め殺しの樹』を読み、今回は三浦綾子文学賞を受賞した『颶風(ぐふう)の王』を読んだ。

     

 妻から「どうしたの? 河崎秋子にそんなにハマって・・・?」と言われたのだが、一人の作家の作品を、こんなに続けざまに読むことは僕にとって初めてだ。それも、ここ何日かはTVドラマやニュースも観ないで、夜の許す時間のほとんどを、これに費やしての一気読みの感じ。


 作家の松井今朝子さんは『土に購う』の解説で、「河崎作品は観念に先立って、圧倒的なリアリティを有する筆致の描写が緊密に結びつくことで、現実の厳しさや凄まじさを再現しながら、そこに打ち勝つ本源的な生命力を蘇らせる小説だ」と書いていたが、今回読んだ『颶風の王』も、まさにその通りだった。

 時代設定は、明治の東北の村から平成の北海道まで、6世代・150年に渡る馬と生きた家族の物語なのである。


 第一章は明治期の東北。許されぬ仲の妊婦ミネ(庄屋の娘)と吉治(小作農)が駆け落ち。吉治は殺され、ミネは吉治が育てた牡馬アオと逃げる途中、雪洞に閉じ込められ、餓死寸前の状態で正気を失ったミネは、脚を折って死んでいくアオの肉を食べ生きながらえ発見、救出される物語。生まれた捨造は小作農夫妻に育てられ、アオの孫にあたる馬と共に「開拓民募集」の新聞記事にひかれて北海道に渡る。


 第二章は昭和の戦後。根室半島の海辺の地で馬の飼育を生業に暮らす捨造家族の物語。戦争で息子を失った捨造は、孫の和子に馬の飼育の技を教え、アオの血を引く馬ワカの飼育をまかせる。成長した牡馬ワカは、無人島に昆布漁に駆り出されたのだが、台風で崖崩れが起こり、他の馬たちとともに島に取り残されるが、捨造と和子はなすすべもなく馬の救出を諦める。この災難で一家は馬の半数を失い暮らしが成り立たず、馬の飼育から離れて、和子の母方の小豆農家の実家近くの十勝平野に移り住む。


 第三章は平成。和子の孫、大学生のひかりの物語。りかりはシングルマザーの母に代わって祖母和子に育てられるのだが、島の馬の話をよく聞かされながら育つ。その祖母和子が脳卒中で倒れる。一週間後に昏睡から覚めた和子は朦朧としている中でも、島に置き去りにしてしまった馬を口走る。ひかりは病床の和子のために島にいる馬を解放することを思い立ち、大学の馬研究会の力を借りて、根室無人島で野生馬として生き残った最後の一頭と対峙すが、それは救うべき存在など微塵もない、生きるべくして生きている姿であることを覚知する。           
 
 このような物語の展開なのだが、自然と人間の関係、人間の及ばぬ世界が存在する自然の厳しさ、そして、生きるとはどんなことなのかをテーマに、時代背景、自然の厳しさ、それらに翻弄される中で、物語の随所で追及している。まさに河崎秋子のワールド満載の作品で読み応えある。

 ここでちょっと、『鯨の岬』と『颶風の王』の文庫版の解説で、作家の桜木紫乃さんと書評家の豊崎由実さんが、河崎秋子さんに会ったときの印象を書いているのが興味深いので抜粋し紹介する。

◇文庫『鯨の岬』の解説で作家の桜木紫乃さんは、2013年に北海道内の書き手が札幌に集まり会食したときの印象を書いている。
── 今でもはっきりと覚えているひとことがある。いったいどんな話の流れでそんな言葉が飛び出したのか、それすらも霞むほどの衝撃だった。
「鯨以外の哺乳類はすべて絞めることができます」
 初対面の挨拶の流れにしてはハードなひとことだったが、返した言葉が「人間も?」。こちらの質問に彼女は「ええ、たぶん」と答えたと記憶している。
 そのあと彼女は落ち着き払った仕種で、声で、哺乳類を絞める方法を語っていた。
 当時の彼女の生業は羊飼いで、生家では牛馬の世話もしているという。いつ原稿を書いているのか、との問いには「牛舎に出る前です」と答えた。──

◇文庫『颶風の王』の解説で書評家の豊崎由実さんは、2015年、小説家同士のトークイベントの打ち上げの席で、少し離れた席にいる見知らぬ女性に目がとまる。
── ポニーテール風、というよりはひっつめ頭的に適当にまとめたヘアスタイル、Tシャッとパンツ姿に首からはタオルを下げた、洒落っ気皆無のスタイル。日焼けした筋肉質の身体つきと、強い眼差し。文系イベントの打ち上げの席ではあまりお目にかからない面構えのいい女性で気になったので、隣席の知人に「あれは誰か」と訊ねたら、「『颶風の王』という作品で三浦綾子文学賞を受賞した新人作家で、普段は北海道東端の別海町で羊飼いをしながら小説を書いてる」「今日ここに来る前、北海道マラソンを走ってきたみたい」という答えが返ってきたものだから、思わず「羊飼いぃ〜っ?」「マラソォンン〜ッ?」と素っ頓狂な声を上げたことを今も鮮明に思い出すことができる。──と書き、

 さらに、── 馬に命を救われたミネ。馬によって命を与えられた捨造。自分が救い出すことがで きなかった馬に心を残し続ける和子。最後の一頭となった馬との対面によって、大きな視野を得るひかり。豊かで美しいだけではない、厳しく残酷な貌も持ち合わせる東北や北海道の自然を背景に、人と馬の百二十年余りの時間を、原稿用紙わずか四百枚弱で描ききった力量に感服。ベタついた動物愛護精神とはかけはなれた心持ちで、馬という生きものの魅力を伸びやかに伝える闊達な文章に感嘆。三年前の夏に見かけた面構えのいい女性は、面構えのいい小説を書く作家だったのだ。──と書いている。