『 あきない世傳 金と銀(八) 瀑布篇 』を読む

 僕はこの『あきない世傳 金と銀』は、すでに1巻~7巻を読んでいる。この高田郁さんのシリーズは、半年に1冊のペースで読むことができる時代小説だ。
 前回は昨年の8月。
 毎回、楽しく読ませてもらっているので、新聞広告で8巻目が出たことを知って、早速、購入。

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 この『あきない世傳 金と銀』シリーズは、江戸時代に「買うての幸い、売っての幸せ」をモットーに、呉服商を営む女商人の物語。
 主人公の幸。学者の子として生まれるが、兄や父の死別があり、9歳で大坂・天満の呉服商「五鈴屋」に奉公に出される。
 商家では「一生、鍋の底を磨いて過ごす」と言われる女衆の身分ではあったが、番頭に才を認められ、幸自身も徐々に商いに心を惹かれ、知識を得ようとして、商人としての幸の人生が始まる。
 番頭の「商いの戦国武将になれる器」との言葉通り、幸は見込まれて「五鈴屋」の店主の妻・ご寮さんとなって、商いの世界でその才能を発揮する。
 「五鈴屋」の六代目店主が亡くなり、大阪では「女名前禁止」という掟ながら、暖簾を繋げるための異例の一時的処置として七代目店主となった幸は、亡夫との約束でもあった江戸に念願の店を出す。
 ものの考え方、着物に対する好みも、大坂とはまるで異なる江戸。知恵をしぼり、いままでの大阪での呉服商の常識を覆すような工夫をしながら、生まれたばかりの江戸店を育てる。
 7巻では、もとは侍の裃に用いられていた「小紋染め」を、町人にも着れるものに誕生させた江戸店誕生1年間の奮闘の物語だったが、8巻では、さらにそれを誰でも着られる、男女に好まれる「江戸小紋へと知恵をしぼる物語なのだが、妹の結に大両替商からの後添えの話、はたまた、小紋図案に才を発揮し、将来の店主として育てている手代の賢輔にも婿養子の話が舞い込んだり、幕府から千五百両の献上金を命じられたりと、実にハラハラドキドキ、知恵をしぼり乗り越える展開が面白い。

f:id:naozi:20080825101704j:plainここの物語に出てくる「江戸小紋は、三重県白子の「伊勢型紙」を使って染色したものなのだが、この型彫りをする、現代では貴重な型彫職人の一人を僕は知っている。
 2年前に、JR青梅線沢井駅近くの「櫛かんざし美術館」で、その知人のタカイさん(三重県白子出身)の「型彫り作品展と実演」を鑑賞したことがある。

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 この実演を見て、話も聞いて、その技術の高さに感動したのが蘇ってきて、そんな意味からも興味津々読ませてもらった。

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