記録映画『 越後奥三面 ─ 山に生かされた日々 ─』を観る

 新潟県の北部、朝日連峰の懐深くに位置する奥三面(おくみおもて)。
 ここは今、「奥三面ダム」の底に沈んでいる。

 ダムが建設されて40年。そのダム建設にともなって現地調査をした結果、19の遺跡を確認。
 旧石器時代(約3万~1万3千年前)、縄文時代(約1万2千~2千4百年前)、弥生時代(約2千年前)、古墳時代(約千7百年前)、江戸時代(約4百~百30年前)の生活の跡や土器・石器などが発見された。
 その旧石器時代以来、綿々と続いた歴史ある奥三面の集落。

 そこのダム水没前の生活を、記録映画作家・映像民俗学者として知られる姫田忠義率いる民族文化映像研究所(民映研)が「山の恵みを細大漏らさず利用する生活が奇跡のように保たれていた奥三面に瞠目し」記録映画に残した。


 その映画『越後奥三面 ─山に生かされた日々─』のデジタルリマスター版が、いま、東京・ポレポレ東中野で公開されている。
 その情報をシカタ君経由で知って、公開3日目に、早速、観た。

    

 凄い記録映画だった。
 40年前まで確かに存在した山の暮らしに驚く145分の映像記録だ。
 人々は集落での稲作のかたわら、縄文時代から自然の豊富な恵みを受けて暮らしつづけてきた。
 例えば……、
 冬、2mも積雪するという環境で、男達は雪山に入りウサギなどの小動物や熊を、昔からの仕掛けや鉄砲で狩る。
 春、一家総出で山小屋に一週間ほど泊まりがけでゼンマイなどの山菜採り。
 夏、女達が焼畑をして、ソバや小豆を栽培する。
 秋には女達はキノコ狩りや、クルミや栃の実を採り食糧とするために処理を施す。男達は川に仕掛けた昔ながらの漁で、サケ・マス・イワナなどを捕らえる。
 その四季折々の生活、山の神々を意識した行事、集落みんなでの共同作業、それらを1980年から4年間にわたって撮影を行ったものだ。

    

 30数戸の集落の記録映画は、確かに、縄文時代から綿々と続いた山の民の営みであった。僕は、映画の最後の方に映し出された男達による斧を使っての「丸木舟作り」を観ながら、それを確信した。
 こんな山の民の営みが、40年前まで存在したことに、本当に驚き、感動した。