農産物流通コンサルタント・山本謙治さんの言葉

 溜まった新聞に目を通していたら、東京新聞日曜版「あの人に迫る」に農産物流通コンサルタントの山本謙治さんがインタビューに答えていた。
        
 山本さんは、廃棄食品の横流しや、産地や食品偽装問題などを「日本の食の安さが問題の根底にある」と指摘して、その具体的な事例を挙げている。
 その事例内容が、実に分かりやすく、日頃、農産物を生産販売している僕らには、実に納得性のある主張なので、ここに、一部を抜粋し記載させていただく。



──その1
 小売りや外食の裏側をみてきた経験から言うと、あまりにも消費者が偉いんだという風潮が出来上がってしまっている。消費者の気持ちをそこまで読まなくてもいいのにと。先読みして、過剰サービスをしてしまうところに問題がある。
 例えば、日本には三分の一ルールがあります。賞味期限が六カ月の商品の場合、期限の三分の一となる製造後二カ月までの商品しかスーパーやコンビニエンスストアなどの小売店に卸さないというルールです。海外ではないですよ。消費者の潔癖好きに応えるためにできた日本独自のルールです。日本という国は消費者の求めているレベル、清潔度とか、そういうのが過剰なんです。



──その2
 生産する場所と生活する場所というのが断絶している。
 都市生活では生産する場面を全然見ない。そういう情報が欠落すると、店頭で販売しているものが、適正かどうか分からない。(子どもの頃、通学路に畑があった)ぼくらは、これくらいの商品は、これくらいの値段がするだろうと暗黙知がある。だから、それより安いと、でも大丈夫?と思う。
 価格の裏付けの正当性が分からないと、自分にとっての安いか高いかだけで判断してしまう。食べ物の値段に関するものさしが必要な時代なんです。



──その3
 この国では消費者に対して、この価格が本当なんですということは、誰も価値として扱わない。ニュースはやっぱり、「庶民は値上がりで、大変です」という話ばかり。良い食品の価格を上げようと言うと、「貧困にあえいでいる人たちはどうなるんだ」と言う人がけっこういる。その貧困の人たちを救うために、食料の生産者、流通業者を貧困に追い込むのは正しいですかということを言いたい。今、起きている食品偽装というのは、貧困に追い込まれた製造業者や、生産者がもう無理ですと言って、偽装に手を染めるというのも多いんです。