斎藤訓之著『有機野菜はウソをつく』を読む

 この、ちょっと衝撃的なタイトルの新書。
 裏表紙の内容説明には、このように書かれている。
 ─ 有機野菜を売ったり買い求めたりするのは誤りで有害であるとか、そんな売り買いはやめるべきだ、などとは言わない。しかし、「有機農産物」だから「安全」しかも「おいしい」「健康にいい」と結び付ける訴求の仕方(売り方)は明らかに誤りだ。─
           
 著者は、有機農業、有機農産物に対する間違ったイメージの流布が、私達の食生活をいかに不自由にしているか、食材の選択肢を狭めているか、もっと、賢い消費者になろうと、
   第1章 有機野菜だから安全・安心は大きな間違い
   第2章 作物・土・成長のしくみから考えて、有機栽培ははたしてベストか
   第3章 有機農業はどのような経緯で支持を得てきたか
   第4章 有機栽培である必要はない
   第5章 健康な野菜を見分けることができる、それが賢い消費者
 このような章立てで、間違った有機イメージ、間違った農薬の知識などに対して、丁寧にその誤解を解明して、知っておくべき関連知識を説明している。

 そして、これからの時代の農業に対して、
 「土の質が悪く、降水量が多く、湿度も高いという、作物の栽培がやりにくい国土で長い年月農業を営んできた」日本人の、古くからの優れた知恵を有機的農業を実現する技術として活かし、「安全性と性能が向上した農薬や化学肥料」をも否定せず、「さらには遺伝子組み換え作物も組み合わせていけば、よりおいしくて、体によくて、安全で、環境にもよい、しかも低コストな農業、これまでの人間の知恵を結集して統合した新時代の農業が実現出来る」のではないかと論じている。
 なかなかの読み応えのある新書である。
 農作物を作る人、それを販売する人、そして、その農産物を日々食べる人にとって、自分が抱いている農産物の知識とイメージの点検という意味からも、本書に書かれていることは、一読に値すると思う。