文庫・東野圭吾著『夢幻花』を読む

 「最近ブログに本のこと書かないね。」本好きの友人から、そんな言葉を投げかけられた。
 読んでないわけではないが、いろいろな行事やら、出掛けることも多く、読書時間は短くなっているし、読書集中力も落ちているのは確かだ。
 そんな言葉に応えて、今日は先週読み終わって、まだ触れてない東野圭吾著の文庫本『夢幻花』について記しておく。
      

 この「幻夢花」というタイトルと、「禁断の花をめぐる衝撃のミステリ」というキャッチコピーに惹かれて読み出した小説だが、さすが東野ミステリだ。



 アサガオに黄色い花はない。
 江戸時代には存在した。
 なぜ、今は存在しないのか。
 黄色いアサガオは、幻覚作用があると言われている「禁断の花」。
 その花をめぐり、宿命を背負った2つの家族。
 その家族の者たちの人間ドラマが交錯する。



 毎年、朝顔市に必ず家族で行くという2つの家族。
 そして、その朝顔市に連れてこられたが、飽きてしまったそれぞれの家族の少年と少女の出会い。
 物語はここからスタートする。
 原発事故で、輝く未来と信じていた原子力科学者の道を砕かれた青年の葛藤や、ミュージシャンが自分の能力の限界を感じて幻覚作用の薬物にのめり込む心情など、時代のテーマを織り込みながら、物語は展開する。

 

 これ以上書くとネタバレになり、これから読む人の迷惑になるので、これくらいにするが、最後は、意外とホッとする結末なのがうれしい。
 主人公と一緒に謎に挑み続ける彼女に「あたしたち、何だか似てるよね。一生懸命、自分が信じてきた道を進んできたはずなのに、いつの間にか迷子になってる」(本文333頁)と言わせるのだが、その若い2人は最後の最後で「生きる希望を見出し」て、物語は終わるのだ。