東京にはいろいろな博物館がある

 先日、浅草の近くに出掛けたときに、東武線で一つ先の「東京スカイツリー駅」の近くにたばこと塩の博物館というのがあって、現在そこで「江戸の園芸熱─浮世絵に見る庶民の草花愛」という特別展示をやっているので寄ってみた。
 なぜ、この特別展に興味があったのかというと、以前に、朝井まかての『 花競べ 』という時代小説を読んだときに、江戸時代には武士から庶民まで草花の栽培と観賞を楽しんでいたことを知ったからだ。
 それを裏付ける浮世絵の展示ならば、ぜひ、観ておきたいと思った。

 

たばこと塩の博物館
 東京スカイツリー駅で降りて、スカイツリーを見上げながら、歩くこと7~8分で『たばこと塩の博物館』はあった。

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 正面入り口に、原形は19世紀の初め頃、スウェーデンのたばこ屋が看板としていたというシンボルモニュメントがあった。

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 早速、入館。なんと65歳以上は入館料50円だった。

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 展示してある浮世絵は、前期と後期で入れ替えもあるようだが約200点。
 その数々の浮世絵を観ると、江戸時代後期には、こんな庶民文化が花咲いていたと驚く。
 説明文を読む
 ・ここ『たばこと塩の博物館』がある地域(墨田区)には、墨堤、亀戸天神、亀戸の梅屋敷、小村の梅屋敷、向島百花園など、数多くの花の名所があり、江戸の人々に親しまれ、浮世絵の格好の画材になっていた。
 ・江戸後期になると、四季の花が、いつ、どこで見られるかを記した江戸近郊の花名所についてのガイドブックも出版されていた。
 ・18世紀、八代将軍吉宗の植樹政策もあり、江戸近郊には桜並木の名所が一気に増えた。
 ・18世紀半ばには、草花を手元に置くために植木鉢が普及した。
 ・江戸には「振り売り」と呼ばれる店を持たない商人が多数いて、野菜や魚介類など食材を売り歩いていたが、鉢植を売る「振り売り」もいたし、縁日や盛り場では露天で植木が売っていた。

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 展示されている浮世絵には、「歯磨きをする女性の隣で、朝顔の鉢を手にしている女性」「大型の三色の菊を眺める女性」「梅と福寿草の鉢を見下ろしている女性」や、歌川広重作の「横浜異人館之図」には菊が植えられた花壇が描かれているし、歌舞伎役者と花々が親しんでいる一場面を描いたもの、「菊の細工物」と題した菊人形を描いたもの、そんな浮世絵の数々があったし、「草木育種」などと表紙に書かれた園芸専門書も展示してあった。

 実に、見応えのある展示物だった。

 作品は、個人所有のものも多く撮影は禁止だったので、売店で買った絵はがきを接写してアップ。

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朝井まかての『 花競べ 』
 この特別展を観るキッカケとなった小説の読後感を、僕は昨年の8月に次のように書いている。
        
 江戸時代の物語で、木や草花を栽培し、種から育てたり、挿し芽、挿し木、接ぎ木、品種改良などを行う花師が主人公の時代小説だ。
 江戸時代に、武士から庶民まで夢中になった草花の栽培と観賞。
 それによって職業として成り立つ花師。
 江戸時代の民度の高さというか、花文化を楽しむ暮らしがあったことに驚く。
 そして、物語に出てくる市井の人々の暮らしに根付いた人情に、ついつい惹かれて最後まで読ませてくれる。