ポーラ・アンダーウッド著『一万年の旅路』を読み始めている

 この書籍『一万年の旅路 ネイティヴ・アメリカンの口承史』が出たのは25年前であるので、すでに読んだことがある人は多いのではないかと思う。


 ネイティヴ・アメリカンというのは、北アメリカの先住民であるイロコイ族。
 彼らが重要な事項を決定する際は、全員が納得するまで話し合う。そこで彼らが何より優先して考えなければならないことは、現世代のことではなく、これから生まれ来る世代が、自分たちより悪い環境で暮らすことがないよう、心を配り決定を下す。
 今なお続いているイロコイ族のこのような知恵と実践は、民主主義の一つの原点としてアメリカ建国、国際連盟国際連合にも影響を与えたと言われている。

 そのイロコイ族の成り立ちの口承史ということで、前々から読みたいと思っていた書籍ではあるが、500ページを超える分厚い本で、なかなか手が出なかった。

    

 先日、友人宅を訪れた時に本棚にこの本があったので、数ページめくってみたらやっぱり興味ある内容。
 友人に貸してくれないかと言ったら「これだけは貸せない。時々、読み返している」とのことで断られ、ますます読みたくなって、メルカリで入手し、読み出している。


 まだ、80ページほどしか読み進めていないのだが、その内容にひきづり込まれている。
 読み終わるまでには、1ヵ月ほどかかるかもしれない。とにかく、考えさせられる内容と展開の物語なのだ。

 ネットで得た情報の内容を要約すると、
「イロコイ族の系譜をひく女性が未来の世代へ贈る、一万年間語り継がれたモンゴロイドの大いなる旅路。
 約一万年前に地震津波により安住の地を追われた一族。海に呑まれる寸前のベーリング陸橋を渡ることを決意し、先達が失敗したその渡りを成功させた。そしてカナダ北西部での冬越え、現代でも困難なロッキー山脈越え、米中西部の巨大な砂漠の横断等の偉業を成し遂げ、五大湖南岸に現在の新たな安住の地を獲得した」という物語。

僕は凄い内容だとゾクゾクしながら読んでいるのだが、例えば
◆本書28ページには
「われらは強い民であるのがわかっただろう。轟く大地と、天に達する海から逃れてここまで歩んだ。われらは知恵ある民であるのがわかっただろう。さまざまな状況の変化にかかわらず、生きのびる術をすばやく学ぶ。われらは耐え忍ぶ民であるのがわかっただろう。大きな困難にめげず、〈選びし目的〉をめざし続けるのだ。なおかつ、これもわかったはず」
 彼女はそういって、宙にぐるりと自分の想いを表わす輪を描いた。
「すなわち、われらは幼い民で、じゅうぶん学ぶ前に先生を失い、あれこれを決めるのに言い争ってばかりいる子どものようだ。
 ならばいまこそ、節度ある話し合いの知恵を求める民への道を学ぼうではないか。指導者をまたたくまに失いかねないことを、記憶にとどめようではないか。一人では不可能なことも、大勢なら可能になるかもしれないことを理解しようではないか。
 そしてもし、こうしたことがすべて記憶からすり抜けたとしても、これだけはおぼえておくがいい。節度ある話し合いの知恵を求めることどんなに大勢でも、どんなに少数でも、どんなに年老いていても、どんなに若くとも、節度ある話し合いの知恵を求めること。一同の中で最年少の者にさえ、座を与えて耳を傾けるがいい。
 ただしこれを、私が助言したからといって行なうのも、私を讃えて行なうのもまかりならぬ。みずからその内にある知恵を見抜いて実行せよ。
 私がこのように語るのは、自分の一族が記憶にとどめられる一族となることを願えばこそ。ここでおまえたちに言い残す。他の民がわれらと道を交えるとき、他の民がしばし、われらとともに座すとき、彼らにこう語らしむべし。互いに耳を傾け、ともに話し合い、知恵への節度ある道をたどる民を、われらはこの目で見た、と――。よいな」


◇ここで言っている「節度ある話し合い」とは、まさに、僕たちが大切にしている「研鑽方式」ではないか。

◆本書35ページには
 そうして一族の全員が、彼女の言葉に含まれる知恵を胸の内で感じとった。以前、大騒ぎするばかりで、知恵など少しも聞こえてこなかったときのことが思い出された。いま、互いの話に耳を傾ける静かな心の輪を考えると、自分たちの道の真価が噛みしめられるのだった。
 そこで、一つの固い決意が生まれた。 二番目の故郷となる島へたどり着くこととは別な、もう一つの目的である。彼らは、これまで身につけた節度ある話し合いのしかたを守り、磨いていく民になろうと決めた。子どもたちの子どもたちの子どもたちが、より大きな理解の恩恵を受けられるように。そしてまた悲喜こもごもの彼らの道が、知恵のやさしい声によって和らげられるように──


◇ここでは「子どもたちの子どもたちの子どもたち」と言っているが、まさに次代へ「節度ある話し合い」(僕たちが普段行っている研鑽)のしかたを継承し、「愛児に楽園を」と決意しているのだ。

 

◆本書43ページからは、ベーリング陸橋を渡る様子が描かれているのだが、渡るために「大いなる綱」を作る。それは渡るためだけの「大いなる綱」ではなく、それは「一体となって難局を乗り越える」ためのものでもあるのだ。

 

 これから、どんな展開、どんな内容のことが描かれているのか。
 僕はワクワクしながら、読み進めている。