先日、知人から「息子が主演を演じている映画の試写会に来て欲しい・・」と、試写会招待券とパンフレットが送られてきた。
主演を演じている岸健太朗も知っているし、彼の母親(知人の奥さん)も出演しているというので、今日の午後、渋谷のユーロスペース地下にある映画美学校試写室に行った。
タイトルの『種をまく人』は、ファン・ゴッホの名画と、東日本大震災の被災地で監督の竹内洋介が出会った「ひわわり」に由来しているらしい。
内容的には、人間の苦悩というか、贖罪を求めて生きる葛藤をテーマにした、観る人に重く語りかける映画だった。
主人公を演じた岸健太朗の役作り風貌も、髭を蓄え、減量して、かなりゴッホチックなもので、前回出演した映画の時より格段の演技力を感じて、主演と同時に撮影監督もしているのだが、俳優としての将来性を僕は感じた。
これから観る人にはネタバレとなってしまうが、少しだけ、僕が感じ取った内容に触れてみたい。
主人公の光雄は、精神病院を退院して3年ぶりに弟・裕太の家を訪れる。伯父・光雄との再会を喜ぶ長女の知恵とその妹でダウン症の一希。
光雄は家庭の温かさをそこで味わうが、翌日、知恵と一希を遊園地に連れて行くことになり、そこで思わぬ不幸に遭遇。
光雄がトイレに行っている間に、それは起こり、妹の一希が亡くなる。(その内容はこれから観る人のために伏せておこう)。
妹を死なせたことに茫然自失となった姉の知恵は、光雄がやったと嘘を言ってしまう。
そんな知恵を、光雄は丸ごと受け止める。
祖母をはじめ周りのさまざまな非難や疑いの中で、光雄は一言も釈明せず、その状況を受け入れて、彷徨う。
知恵は、妹を死なせたこと、嘘をついたこと、その罪に小さな心を痛め葛藤の日々。
家庭も崩壊に向かう。
光雄は、東日本震災の被害地で見たひまわりと、一希が好きだったひまわりを重ね合わせながら、一希を弔うかのように、林の中や野原にある枯れたひまわりから種を取り、それを、一希が亡くなった遊園地の片隅や、道ばたに、一心不乱に埋めたり、撒いたりする。
そんな、幼子の死と、少女の嘘が招いた崩壊する家族や、葛藤し続けながら懸命に生きる人々を、説明的な言葉やセリフを極力控えて、光雄や知恵の姿や表情を通し、映像で丹念に描き語りかけるという力作の映画である。
津波の傷跡がいまだ残る松林の道。
そこで父親・裕太と長女の知恵は、群生して咲いているひまわり見る。
そのラストシーンに、かすかな光を垣間見て、僕たち観る者は救われる。