「文藝春秋」3月号のおしゃべり

 僕が住んでいる町田市には、年一回の「成人健康診査」受診という制度がある。
 1月生まれの僕に残された受診期限は2月末と、残り少なくなって「これはヤバイ」とちょっと慌てて、今朝、案内所に行く途中で、町田駅近くのクリニックに寄って受診した。
 結果は、2週間後だ。

 今日のブログは、昨日の埼玉県のヤマギシの村に出張したときの電車の中と、今日の健康診断での待ち時間に読んだ「文藝春秋」について書く。
        

芥川賞受賞作品・山下澄人著『しんせかい』
 作者の山下澄人さんは、倉本聰さんが主宰する富良野塾の2期生だ。
 作品の内容も、そこでの1年間の生活が書かれている。
          
 読みやすいことは確かだが、話し言葉そのままの思い浮かんだ言葉の羅列の文体テンポといい、自由自在な視点の移り変わりと唐突な場面転換といい、一見ムダと思える会話展開といい、「これが芥川賞なんだ」と、時には自分の感性に自信を失いながら、最後まで読んだ。
 読み終わってから、「芥川賞選評」を読んだら、賛否両論だった。
 「10名の選考委員のギリギリ過半数」の受賞で「強力にプッシュする」でもなく「絶対に認めない」という反対意見もなく決まった受賞作品だというのが分かった。
 著者はスマートフォンで原稿を書くようだし、表現方法も表現視点も斬新だし、僕たちの年代には分からないものを秘めた作品なのだろう。
 そうは言っても、地元からは「収容所」と言われている俳優・脚本家養成塾で、生活施設建設と、生活費を稼ぐための過度な労働をしながらの日々の生活の様子、そこでの若者同士の人間模様と、先生に対する師弟感情の葛藤などが、淡々と書かれていて興味を維持させて読ませてくれた。
 著者はインタビューで「賞を獲られたことで、作品の書き方が変わることがありますか?」と聞かれて、
「僕はいまからちゃんと小説の勉強をしても、諸先輩方には追いつけない。だからいつか書けなくなるまでいまのまま自分のスタイルを貫きたい。そのためには馬鹿を維持するしかない。」と答えている。
 既存の小説文体を破壊しながら、それを重々承知で、山下澄人という作家は挑戦しているのだなと思った。


◇そのほかの「文藝春秋」の記事から
 今月号に掲載されている記事で、僕が興味を持って読んだもの。
         

*「経産省東芝を見放した」児玉博
 東芝に26年間勤めた者としては、いま起こっている東芝問題に無関心ではいられない。
*「14歳プロは羽生を超えるか」松本博文
 映画『聖の青春』を観て、原作も読んだばかりなので、プロ棋士デビューの史上最年少記録を更新した藤井聡太(中学2年生・14歳2ヶ月)に興味津々。
*「世界遺産に戸惑うかくれキリシタン」金子貴一
 映画『沈黙‐サイレンス‐』を観たいと思っているので読んでみた。
 いまでも、かくれキリシタンの組織は、長崎市(2組織)、五島列島(1組織)、平戸市(4組織)にあるのだという。神道と仏教を隠れ蓑に、400年の歳月を世間から隔絶し儀式を執り行っているらしい。