最近、僕は、芥川賞受賞作より直木賞受賞作の方に興味がある。純文学的作品が、加齢とともに苦手になって、難解になってきたのだ。
そうは言っても、文藝春秋が手に入ったので、今回の芥川賞作品・今村夏子さんの『 むらさきのスカートの女 』を読んでみた。
今村夏子さんの作品は、以前に『星の子』を読んだことがある。
これは、2017年に芥川賞候補にもなっていたし、昨年の本屋大賞ノミネート作品だったので読んだのだが、内容は、病弱な主人公が幼少の頃、特殊な水によって病気が治ったのをきっかけに、両親が新興宗教にはまってしまうという物語だった。
今村さんは、「親の愛とは何か」「子供から観た親への思いとは何か」を問いながら物語を展開させて、どんなに世間からの軋轢のなかでも、愛情で結ばれている親子関係は揺るぎないと感じさせる家族愛の世界を描いていたように僕は感じた。
今回の『 むらさきのスカートの女 』は、「むらさきのスカートの女」と呼ばれている女性を、ストーカー的に観察する「黄色いカーディガンの女」の物語だった。
文章そのものは読みやすいし、どこにでもいるような、ちょっと変わった女性を、執拗なまでに観察し続ける女性に、ちょっと不気味さを感じながら、物語の展開に引き込まれ読み終わった。
しかし、読み終わった今、これといった明確なまでの感動を受け取ったと言うよりは、何気ない世界の中の、何気ない人間模様の中に存在する「不気味さ」を、僕は感じている。
これが、今村夏子という作家が問う世界なのだろうか、と・・・。