読書についてのおしゃべり

高橋弘希著『 送り火 』を文藝春秋で読む
 芥川賞作品として、文藝春秋9月号掲載の高橋弘希さんの『 送り火 』を読んだ。
      
 父の転勤で、東京から田舎の全校生徒12人しかいない統廃合が翌年は決まっている中学校に転校してきた少年。
 クラスの男子が6人と言う、少人数の閉鎖的な中で繰り広げられる、陰湿な子ども達の遊びと称しながら、それを超えた理不尽な暴力やいじめ。
 それに巻き込まれながら、傍観者的視点で物語は展開するが、しかしそれは、とりもなおさず加害者としての立場になっていた。
 このような内容なのだが、高橋さんが書きたかったことは、何だったんだろうと、僕の解読力不足で、ちょっと考え込んでしまう作品だった。
 しかし、最近の芥川賞作品ではなかったことだが、今回の受賞作は、一気に引き込まれて読んだ。
 なんと言っても、美しい風景描写や、少年達の心を細密に描いた描写は、リアルで完成されている。
 高橋弘希さんの豊かな表現力に驚き、他の作品も読みたくなるような、そんな受賞作だった。

 
朝井まかての時代小説が読みたくなって
 モンゴルに出張していたりで、約1ヵ月振りに書店に寄った。
 何となく、ほんとうに何となく、朝井まかでの時代小説が読みたくなって買ったのが、彼女のデビュー作という『 花競べ 』という文庫本。
      
 僕は、今までに読んでいる彼女の作品は、直木賞を受賞した歌人・中島歌子の生涯を描いた『 恋歌 』と、井原西鶴を主人公に描いた『 阿蘭陀西鶴 』。さらに、葛飾北斎の娘・葛飾応為の生涯を描いた『 眩(くらら)』の3冊に、花職人を描いた『 先生のお庭番 』と、最後に読んだのが、江戸時代の開業医を描いた『 藪医ふらここ堂 』の計5冊だ。
 どれも、感銘を受けて、時々、朝井まかての世界に浸りたくなるのだ。
 今回は、木や草花を栽培し、種から育てたり、挿し芽、挿し木、接ぎ木、品種改良などを行う花師が主人公の時代小説だ。
 さて、どんな朝井まかての世界に引き込まれるのか、楽しみに読み進めよう。