妻の本棚から見つけた本

 月末になって、小遣いの懐具合も寂しくなっているので、手近な妻の本棚で、何か読むものはないかと物色。
 今回、探し当てたのは、
 『往復書簡 いのちへの対話 露の身ながら』という表紙デザインの美しい本。
 免疫学者の多田富雄さんと、遺伝学者の柳澤桂子さんの手紙のやりとりを書籍にしたものだ。
       
 多田富雄さんは、2010年に亡くなられているが、東京大学名誉教授で有名な免疫学者であり文筆家でもある。
 そして、柳澤桂子さんもお茶の水大学名誉教授で、有名な生命科学者であり文筆家で歌人でもある。
 この2人の2002年から2003年にかけて交わした、1年半の20通の往復書簡。
 本の帯には
 「突然の脳梗塞で、声を失い右半身不随となった免疫学者と、原因不明の難病の末、安楽死を考えた遺伝学者。二人の生命科学者が科学の枠を超えて語り合う。いのち、老い、病、介護、家族、愛、ひと、科学、戦争、遺伝子、平和…。」
 と記載されている。
       
 まだ、半分ほどしか読んでないが、2人とも実に美しい文章で、実に内容の濃い話を幅広く、相手の体を互いに思いやりながら、手紙のやりとりをしている。
 それも、病と付き合いながら、長い時間を費やして・・・。
 読んでいて、心洗われる思いと、そして、あたたかい感動がわき上がる。
 この本は、2004年に刊行されたものだ。
 こんな感動の本を読んでおきながら、僕に一言も教えてくれなかった妻に、ちょっと嫉妬を覚えながらページをめくっている。