水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』は、前々からヤマモトさんが一読を勧めてくれていた新書だった。
週末の三重と栃木への出張の移動中に読んだ。
今、資本主義が最終局面となり終焉に向かっているという事が、実にわかりやすく論じられていた。
それも世界の中で日本がいち早くその兆候が表面化しているという。
長引く日本のゼロ金利が示すのは、資本を投資しても利潤の出ないという、資本主義の「死」を意味している状態で、その先鞭をつけたのは日本なのだという。
資本主義は、フロンティア(周辺)を開拓することで資本(中心)を増殖させなければならない。もう、その余地はなく、もはや地球上に「地理的・物的空間」が残されていないので、延命策として現れたのが「電子・金融空間」だが、それさえも破綻をきたしているという状態を分かりやくす説明して、これからの社会システムが、「成長」でなく、「脱成長」という視点で構築しなければならないが、いまだに「成長」を信奉して政策がなされていると論じている。
この新書を新幹線車内で読んでいたら、前方のニュース掲示パネルに「日銀が追加の金融緩和」という文字が飛び込んできて、さらに著者が論じていることが現実味というか、緊迫感を、僕は感じてしまった。
確かにベストセラーになっているだけあって、生き方や社会を考える上では一読に値する新書だ。
これからの生活も、そして経営も、この認識と視点があるかないかで大きな違いが出てくると思った。
詳しくは読んでいただくとして、僕がちょっと驚き、再認識した一部を記しておきたい。
世界人口の15%の先進国の人々が、富の総取りで成り立っていた近代資本主義。
それがグローバリゼーションとともに、新興国や途上国から「安く仕入れて高く売る」という近代資本主義の成立条件は破壊し、日本も含めた先進国における国民の「社会均質性」を消滅させつつある。
日本でのその現れが、非正規雇用者の増加であり、一昔前に言われていた「一億総中流」がなくなり、これが進めば、貧困層を生み出し、富と貧の二極化が進む結果になると言う。
このようにグローバル資本主義が進めば進むほど、南北問題だった貧富の二極化が、国内の問題となってくるというのだ。
現在、日本では「非正規雇用者が雇用者全体の三割を超え、年収200万円未満で働く人が給与所得者の23.9%を占め、金融資産非保有率が31.0%に達している」という現実。この数字にちょっと驚く。
著者は、新しい社会システムがどのようなものかは自分にも分からないが、この「歴史の危機」である現在を乗り越えるためには、「脱成長という成長」を本気で考えなければならないと、いつまでも経済成長を期待する思考に、警告を発しているのだ。