内田樹・岩田健太郎対談 ─新書『 コロナに生きる 』を読む─

 今回読んだのは、朝日新書『コロナに生きる』
 これは、フランス文学者であり武道家でもある内田樹さんと、微生物感染症専門家であり神戸大学教授の岩田健太郎さんの対談本である。

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   新型コロナウイルス感染症が私たちの生活に大きな影響を及ぼしている今、この2人はどんなことを考えているのだろうかと思って読んでみた。
 【第1章】 リスクとともに生きる(5月14日対談)
 【第2章】 葛藤とともに生きる(6月10日対談)
 【第3章】 偶発性とともに生きる(7月6日対談)
 この3回の対談を収録したもの。


 内田樹さんが「おわりに」で、──ここで論じらた2020年のコロナウイルスについての一連の出来事は少し時間が経ってしまったら「昔の話」として忘れられてしまうと思います。ですから、本書もあと半年もしたら速報性・時事性という意味ではあまり価値のない書物になる可能性があります。でも、「科学的な態度」がどういうものかを知るための資料としては時間が経ってもその価値を減じることはないと思います。── と書いているように、コロナウイルス発生以来、実際にはどのような状況で、どのような実態で、どのように対応されていたのかを検証しながら、感染症とは何か、どのようなものか、それに対しての「科学的な態度」とは何かを、2人が論じあっている内容で、実に示唆に富んだ興味ある対談本だった。

f:id:naozi:20200917204858j:plain「コロナは一過性の病気でなく、何年も継続することがわかってきましたから、3年後、5年後、10年後のコロナに対応した日本社会のあるべき姿を策定することが大切です・・・。」と述べ、いま、「コロナウイルスの問題では、日本もアメリカも〝恐怖〟がいろんな物事を攪乱している感じを受けています。」と、これまでの対応の事例を取り上げて、アメリカではどうだったか、アメリカの国民性はどのようなものか、日本ではどうだったか、日本の国民性がどのように現れたか、さらには「同調圧力」が日本は強い国と言われるが、アメリカでもそれは発生し、それはどのような意識構造のなかから生まれるのか、などなど、2人は論考し、わかりやすく述べている。


 コロナ、コロナで翻弄され気味の日常の今、一読に値する書籍だと思う。