映画『夜明けまでバス停で』を観る

 先月末に、シカタ君から「中学の同級生が脚本を担当した映画が公開される」と紹介されたのが、この映画『夜明けまでバス停で』だ。
 先週末から新宿のK's cinemaで上映されているので行って観た。

     

 この映画は、2020年に渋谷区幡ヶ谷のバス停で起きたホームレス女性殺人事件を題材にした作品。
 話題の映画とあって、平日にもかかわらずほぼ満席の観客。


 パンフレットには「もしかしたら明日、誰しもが置かれるかもしれない〝社会的孤立〟を描く」とあるように、非正規雇用者などによって経済活動が成り立っている現代社会での問題をえぐるような内容の映画として完成度の高い作品だった。

 ぜひお薦めの映画なので、内容を詳しく書くことは控えるが・・・
── 板谷由夏が演じる主人公は、昼間は自作のアクセサリーを売り、夕方から夜は住居も用意されている居酒屋でパートとして働く。
 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の緊急事態宣言で、居酒屋はシフト見直し、勤務時間短縮を経て最終的には人員整理となり、職と住まいを同時に失う。
 住み込みの新たな仕事を探すが見つからない。挙げ句は終夜営業のネットカフェも閉まって夜を過ごす場所もない。
 行き場のない彼女の目に留まったのは、比較的明く危険をそれほど感じない道路に面したバス停だった。──
 
 パートやアルバイトという職ではあるが、普通の生活をして日常を過ごしていた人が、ある日突然、危機的な状況になってしまう。
 自己責任、自助努力という言葉が当然のこととして聞こえる社会。何とか自分で生きる糧を見つけようと努力する自尊心。
 しかし、この格差社会の現代においては、平常では隠れている弱者の生活をも脅かす。
 そんな社会問題をあからさまにえぐり出し、世に問う映画だ。


 主人公の女性以外にも、居酒屋の店長でありながら本社から派遣された男性マネージャーのセクハラに耐える女性、夢を持って日本に来たが生活に困窮しているフィリッピン女性、公園の片隅で社会からはみ出してしまった「明日は目が覚めないように」と祈り生きる希望をなくして眠りにつくホームレスなどが描かれており、数々の現代社会問題を否応をなく考えさせられる。

 

 こんなテーマを突きつける、内容の濃い映画だった。