『サラダ記念日』の出版25周年記念展

 
 町田駅から徒歩で7〜8分のところに「町田市民文学館ことばらんど」がある。
 そこで、歌人俵万智さんの歌集『サラダ記念日』出版25周年記念展が開催されていることを知って出かけてみた。
     

 話題になった『サラダ記念日』が出版された当時は、町田の隣の相模原市にある神奈川県立橋本高校の国語教師を務め、教師生活を送った4年間は町田市に住んでいたということでの催し開催だ。
 僕も昔、この歌集が出版され、手にした時「こんな感覚を、普段の言葉で、こんな短歌に・・」と、その感性に驚き感動したことをかすかに覚えている。
     「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
 歌集のタイトルとなったこの歌だって、それまで僕が知っている歌人や歌集からは想像もつかない斬新な短歌だった。
 僕が『サラダ記念日』の中で一番好きな歌は
     「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
 この歌だ。すごい歌だなって思う。
 この歌は、橋本高校創立20周年記念として詠まれたものらしく「1998年11・21」と記されて作者自筆の色紙が飾られていた。

 俵万智さんは、昨年の東日本震災以降、仙台から沖縄県石垣島に子どもとともに移住しているのだが、その時の子どもを守ろうとする母親の心情と、それ以降に詠んだ歌も展示されていた。
     未来とはすなわち命いつの日も母は子どもを守る生きもの


 一通り展示を見終ってから、歌集やエッセイなど作品が閲覧できるコーナーがあったので、僕は、作者25歳の時に出した『サラダ記念日』から10年が経ち、35歳の時に出した歌集『チョコレート革命』を手に取って読み返してみる。
 俵万智さんは「小さなきっかけで揺れる心を素直に詠む」と言われているのだが、ちょっと大人になってしまった女性の恋心とでも言おうか、相手の男性への微妙な心の揺れの歌が何首も収録されていた。男の僕でさえも唸りたくなる、そんな歌の何首かを文学館のパンフレットの表紙裏にメモしてしまった。
     「不器用に俺は生きるよ」またこんな男を好きになってしまえり
     この男は私のものと言いたくて夕焼けているビルの屋上
     やさしすぎるキスなんかしてくれるから あなたの嘘に気づいてしまう
     もう二度と来ないと思う君の部屋 腐らせないでねミルク、玉ねぎ
     別れ話を抱えて君に会いにゆく こんな日も吾は「晴れ女」なり


 展示場内は撮影禁止だったので、会場外の階段壁に掛けてあった歌を写してきた。
        
       


 蛇足になるが、俵万智さんが早稲田の学生だった時に、高田馬場駅でアルバイトをしていて、場内アナウンスをしていたというのを誰かに聞いたことがある。