北方謙三さんの『チンギス紀』第一巻が刊行されたのは2018年5月だった。
その時の書籍紹介には「ユーラシア大陸に拡がる人類史上最大の帝国、その礎を築いたチンギス・カン。波乱に満ちたその生涯と、彼と出会った様々な英雄たちの生きざまを描く、新たな歴史大長編・・・」と記されていた。
モンゴルを舞台にしたチンギス・カンの物語とあって興味があり、刊行されるたびに読み出して5年が経つ。
今回刊行された第十七巻『チンギス紀 天地』で完結した。
裏表紙帯には「草原で生まれ、大地を駆け、かつてない規模の国を築いたチンギス・カンが、最後の戦場に立つ!」と紹介されてた。
本完結巻の最終346ページ。
自分の死を自覚したチンギスは、幼少より生死をともにしてきたポオルチェと、チンギスと一体になって闘ってきた副官のソルタホーンと、砂漠を進んでいる。
「二人に、言っておこう」
ポオルチェが、全身を硬直させるのがわかった。
「俺は、墓はいらぬ」
「はっ」
「この大地が、俺の墓だ」
「大地が」
ソルタホーンが、絞り出すように言った。
「殿、大地に埋めます。副官殿と二人で、四つの手で穴を掘って、埋めます」
そして最終349ページ。
不意に、視界が緑色になった。
チンギスは、地平まで続く草原の広がりを、見ていた。鮮やかな色が、心に満ちる。
帰るべきところへ、帰ってきた。
この草原で、俺は生きた。
大地を感じ、そして天を知った。
草原の子。草原の男。
不意に、視界が、なくなった。
ここで、第十七巻は終わる。
「僕と同年代の北方謙三さん、やっと書き終わったのだな。僕も、やっと読み終えた」と、ホッとしながらページを閉じた。
ちなみに、チンギス・カンの死は西暦1227年8月18日とされているが、その墓、その所在も含めて未だに確定していない。
ウランバートルの広場に面した政府宮殿正面に「チンギス・カン像」が鎮座している。(2016年撮影)
こちらは、ウランバートルから東に50Km ほどのところにある「チンギス・カン騎馬像」だ。(2018年撮影)