ユーラシア大陸に拡がる人類史上最大の帝国を築いたチンギス・ハーンの生涯を描く北方謙三さんの「 チンギス紀 」シリーズの第九巻『 チンギス紀(九)日輪 』を読み終わった。
モンゴル族の一氏族・キャット氏の長だったテムジンが、同じモンゴル族の各氏族との戦いに勝利し、モンゴル族全体の長となり、いよいよユーラシア大陸という草原の覇者へと近づく。
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天の声が、そうやって聴こえてくるのだ。
天が意思を持ち、民の間にその意思が降り、声となる。誰もが、それに耳を傾ける。いや、自らの声として、それを聴く。
テムジンには、自らの声は聴こえない。
オノン河のほとりで、大会議が開かれる。
モンゴル族の長たちが、そこに集まる。
テムジンも、二百の麾下とともに、そこへむかった。生まれ、育った地である。天から、命を授けられた地、と言ってもいい。
どの長も、百名ほどの民を伴っていて、ほかにもただ集まってきた民もいて、オノン河沿いの静かな草原が、数万の民で溢れていた。(本書120ページ)
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この大会議で、テムジンはモンゴル族の長たちから「チンギス」という尊称を贈られ、「チンギス・カン」となるのだ。
第九巻では、幼少の頃、テムジンと遊んだ友人であり、盟友であり、ライバルであったジャムカが、密かにテムジンの命を狙うという、草原の男2人の戦いが展開される。
ナイマン王国との戦いの中に潜んだジャムカは、千五百騎でテムジンの命を取ろうとするが、麾下の29騎の身代わりによって、全身を負傷しながらもテムジンは一命を取り留める。
そして、第九巻の巻末で、そのジャムカとの決着がつく。