國分功一郎著『 目的への抵抗 』を読んでいる

  新聞書籍広告で東京大学教授の哲学者・國分功一郎さんが『 暇と退屈の倫理学をより深化考察したという新書『 目的への抵抗 』の刊行を知った。


 実は、「人類は豊かさを目指してきた。なのになぜその豊かさを喜べないのか?」それはどうも「暇と退屈に耐えられない現代人」の中にあるらしいと、哲学的に考察している『 暇と退屈の倫理学 』は一度読んだのだが、僕の中では未消化の部分も多々あって、再読しているところだった。


 ネットで新書の書籍紹介をみると
── 自由は目的に抵抗する。そこにこそ人間の自由がある。にもかかわらず我々は「目的」に縛られ、大切なものを見失いつつあるのではないか。コロナ危機以降の世界に対して覚えた違和感、その正体に哲学者が迫る。ソクラテスアガンベンアーレントらの議論をふまえ、消費と贅沢、自由と目的、行政権力と民主主義の相克などを考察、現代社会における哲学の役割を問う。名著『暇と退屈の倫理学』をより深化させた革新的論考。── とある。
 まだ『 暇と退屈の倫理学の再読途中だが、気になって『 目的への抵抗 』を読み始めた。

    

 この書籍は、東京大学教養学部主催「東大TV・高校生と大学生のための金曜特別講座」(2020年10月)のオンライン講義(「新型コロナウイルス感染症対策から考える行政権力の問題」)と、昨年8月の「学期末特別講話」特別授業(「不要不急と民主主義」)を収録したものだ。
 コロナ危機が社会を揺さぶった時期、哲学者として、哲学者の役割として、何を考察したかを述べ、生徒たちとの質疑応答も入れて、その考察過程と考え至ったことの記録が書かれている。

 「生きる」という「目的のため」に、行政から出された「不要不急の外出自粛」。
 医療機関が切迫危機的状況であったとしても、「移動の自由」を制限する政府(行政機関)の政策を安易に「仕方ない」と暗黙の了解をして盲目的に受け入れてしまった我々の「自由」に対する思考はどうだったのか?
 緊急事態だからと立法府を超えてしまう行政府の権力施行を、「三権分立」を尊重する民主主義からみたらどう考察したら良いのか?
 資本主義という現代社会において「効率化・生産性」重視とする基本ルールが、一体我々に何をもたらしているのか?
 などなど、現代日本の政治経済、社会的圧力、その中での我々の思考傾向などを考察している興味津々の内容なのだ。

 

 もう暫く、じっくりと読み返しを繰り返しながら『 暇と退屈の倫理学 』と『 目的への抵抗 』を読んでみようと思う。