10月最後の日曜日のおしゃべり

 今日は10月最後の日曜日。
 ついこの間まで「暑い暑い」と呟いていたのに、今日は、ちょっと肌寒さも感じる、空にはすじ雲が描かれた秋晴れの日曜日だった。

  

◇今朝の「天声人語
 朝日新聞朝刊の天声人語は、「今日は何が書かれているのだろう」と習慣的に目を通す。

    

 今朝は、こんな事が書かれていた。
『書店のレジで、カバーをかけますか、と尋ねられる。はいと答える。自分が選んだ本の表紙が覆われて、題名が見えなくなる。その瞬間が私は好きだ。ちょっとした秘め事ができたような不思議な気分になる▼かつて社会学者の清水幾太郎が、電車のなかで他の人が持つ本の題名が目に入ると「見てはならぬものを見た」ようで恥ずかしくなると書いていた(『日本語の技術』)。反対に、自分の本を他者に知られるのは「心の内側を覗(のぞ)かれたような」気持ちだとも▼本の著者と自分の心が「本当に噛(か)み合う」ということは「秘密の事柄のような気がする」。それは「コッソリとやる」のが当然ではないか、と清水は記した。読書とは、時空を超え、他者と離れ、自分だけのひそかな通信を著者と交わす行為なのだろう▼(以下略)』
 確かに書店の人は「カバーをかけますか?」と必ず聞いてくれる。
 僕も袋は断るが、カバーはお願いする。
 子供の頃から、母親に「本は大事にしなさいよ」と言われたのが、カバーをして読む癖になっていることもあるが、天声人語子が言うように「ちょっとした秘め事ができたような不思議な気分」も確かにあるし、清水幾太郎が言うように、他人が読んでいる本の題名を見てしまうことや、自分の読んでいる本の題名が知られるのは、心の内側を覗き、覗かれる感覚、ちょっと恥ずかしさを含んだ感覚も確かにあるなあ~と思った。
 最後に天声人語子は言う。「自分はあとどれだけの本に出会えるのか。〝秘密の事柄〟をいくつ重ねられるのか。」
 僕も、この年齢になると、一冊読み終えるたびに、それはつくづくと感じることだ。
 読書は「秘め事」的要素があるにはあるが、自分のための備忘録と、この読後感を誰かと共有したいという願いもあって、僕はブログに記載している。

 

朝井まかて著『グッドバイ』を読み終わる
 朝井まかてさんは、僕の好きな作家の一人だ。
 直木賞を受賞した小説の樋口一葉の師だった歌人・中島歌子を描いた『恋歌』や、葛飾北斎の娘を描いた『眩(くらら)』、日本の植物学の父とも言われる牧野富太郎を描いた『ボタニカ』などは、今でも印象に残っている。
 今回読んだ『グッドバイ』は、長崎で幕末から明治にかけて茶の輸出で巨万の富を築いた女貿易商・大浦慶(1828~1884)の、波瀾万丈の生涯を描いた物語だ。

    

 実は、この本を読んでいるときに、NHKスペシャルで『新・幕末史 グローバル・ヒストリー「第1集 幕府vs列強 全面戦争の危機」と「第2集 戊辰戦争 狙われた日本」』を観た。
 これは、幕末の倒幕内戦や戊辰戦争に、いかに欧米列強の野望が渦巻く中で行われ、維新の歴史がつくられたかを描いた衝撃的な放送だった。
 商人としての大浦慶は、そんな欧米の外国貿易商らと交友しながら、それで得た富を、佐賀藩士・大隅重信や、亀山社中をつくった土佐藩士・近藤長次朗や阪本龍馬や、岩崎 弥太郎などと交友して「新しい日本の国づくり」に援助しているのが描かれている。
 幕末から明治にかけて活躍した「こんな女性がいたのか」と、新鮮な驚きで読んでしまった。

 そんなことで、この小説はNHKスペシャルの『新・幕末史』同様、商人の目から見た「もうひとつの幕末史」であると言える物語だと思った。

 

◇今日の夕空
 明日も秋晴れを期待できそう。