オンラインで生物学者の福岡伸一さんの話を聴く

 今日の昼、朝日新聞社主催の「ReライフFESTIVAL@home」のオンライン講演会で、「コロナ時代をどう生きるか~ウイルスとの『動的平衡』」をテーマに、青山学院大学教授・生物学者福岡伸一さんが話していた。

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 このオンライン講演会を聴いて、僕が理解し覚えている範囲で記してみると、このような事だと思う。

 

 福岡さんは冒頭に、ドイツからアメリカに亡命したユダヤ生物学者のルドルフ・シェーンハイマーが言った「生命は機械ではなく、生命は流れだ」という言葉を紹介して「動的平衡」という概念を説明。
 私たち人間が食物を食べて生命を保持しているのも、自動車がガソリンを使って動いているのと同じだとみる現代科学の『機械論的な生命観』を否とし、それは生命の本質ではない、食事で摂取した分子が再合成されて置き換わって、絶え間なく少しずつ入れ替わりながら生命を保っているのだ。
 ルドルフ・シェーンハイマーは、これを、食物の分子にアイソトープでマーカーして突きとめた20世紀最大の発見者だと言う。

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 「変わらないために絶え間なく変わる」という逆説的にも思えるこのバランスこそが、生命の本質であると説く。
 福岡さんは、今の新型ころなウイルスについて、細胞の大きさがサッカーボールなら、ゴマ粒くらいしかない極小の粒子のウイルスに、いま世界が翻弄されているが、ウイルスは本来、私たちを含む大きな生命圏の中の自然の一部で、完全に撲滅したり、排除したりすることはできない。そのため、コロナ禍における「ウイルスとの戦争」というイメージは、生物学的には好ましくなく、自然の一部として「正しく畏れる(恐れるでなく)対応」が重要だという。
 新型コロナウイルスに対して、ワクチンに頼って対応することもいいが、それよりも最大の効果を発揮するのは、我々自身が持っている免疫力だ。自然の一部であるウイルスに対して畏敬を持つのと同時に、自分自身の体の免疫システムを信じる。その免疫力の最大の敵・ストレスをなくした健康な生活が、新型コロナウイルスと共存するための一番の方法だと力説する。
 そして、人間とウイルスとの間に「動的平衡」を成立させるには、ワクチンが普及することで集団の中に免疫が広がることも必要だが、人間の免疫システムがウイルスに対する平衡状態を獲得すること。新型コロナウイルスを日常的なものとして受容できる状態になるように、長い時間軸で、リスクを受容しながら「ウイルスとの動的平衡を目指す」しかないと言っていた。

 

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 この福岡さんの動的平衡は、古代ギリシャの「万物は流転する」や『方丈記』の「ゆく川の流れは絶えずして」のように、古くから言い継がれてきた考え方と同じであると言う。