今日は読書のおしゃべり

須賀しのぶ著『 夏空白花 』を読む

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 須賀しのぶさんの本は、1年前に『 また、桜の国で 』を読んで、先月は、『 革命前夜 』を読んだ。
 昨年読んだ『 また、桜の国で 』は、第二次世界大戦時のポーランドを舞台に、ポーランド大使館の外務書記生として赴任した主人公が、ナチス・ドイツに侵攻され、戦火に染まるワルシャワで、国や民族を超えた友情と、日本人としての誇りを持ち続け、信念を貫き通す物語だった。
 先月読んだ『 革命前夜 』は、東西冷戦の象徴であったベルリンの壁崩壊直前の東ドイツが舞台で、ベルリンの壁で隔たれた東西ドイツの歴史的事象と、そこで生きる人々の葛藤を知り得る歴史小説でもあり、隣人をも信じることが出来ないという監視、密告の非情な社会システムの中でも、愛され続ける高尚な音楽という存在の偉大さを、見事に描いた物語だった。
 そして、今回読んだ『夏空白花』は、上記2冊とはガラッと変わって、終戦翌年に「高校野球大会」を復活させる物語、主人公はかつて出場した甲子園で肩を壊して挫折した過去を持つ朝日新聞大阪本社の記者。
 物語は敗戦当日の天皇玉音放送を、社の屋上で聴くところから始まるのだが、焼け野原と化した街、生きる糧も未来の希望も何もない状態のGHQ統治下の日本。そこから、この国と子ども達の希望のために、幾多の困難に立ち向かいながらも、わずか1年で「高校野球大会」の奇跡の復活に取り組んだ、野球を愛する男たちがいたことを知った。
 いま、コロナ禍でプロ野球のキャンプは無観客で練習試合を行っていて残念と感じているが、つくづくと、日本人はこんな歴史があって野球が好きなんだと実感。
 それにしても、須賀しのぶと言う作家の「多彩な創作分野」に驚く。
 どんな時代の、どんなテーマからも、見事な作品を紡ぎ出す作家だと感嘆する。

 

◇こんな岩波現代文庫を見つけた
 新聞書籍広告で見つけたのが『 哲おじさんと学くん 』という本。

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 なぜ、この書籍が目に止まったかというと、我が息子たち2人は長男が「哲」で次男が「学」なのである。
 妻もビックリ。「面白そう~、買ってきて~」と言うし、僕も興味が湧いたので書店で探して入手。 
 著者は哲学者で日本大学文理学部哲学科教授の永井均氏。
 これから読むのだが、哲学書なのだ。
 内容紹介には、このように書かれている。
── 社会問題よりも、自分をとりまく社会の成立に不思議さを感じる学くんの疑問は、いつも友だちや先生には分かってもらえない。自然法則は「今までそうだった」だけなのに、なぜ未来もそうだと分かるの?なぜ僕は今、この世に存在しているの?学くんの問いに哲おじさんが答えることが、さらなる問いを生む。(「BOOK」データベースより)──
 なかなか興味ある内容のようだ。