原田マハ著『 デトロイト美術館の奇跡 』を読む

 年末に、新聞広告で原田マハさんのデトロイト美術館の奇跡 』が文庫化されたことを知って、お正月に読もうと思って買った。

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 原田マハさんらしいアートの世界で実際に起こったことを題材にした小説である。
 
 デトロイト美術館がある都市・デトロイトは、アメリカ合衆国ミシガン州南東部にあり、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モータークライスラーの米3大自動車メーカーの拠点として有名だ。
 その都市が、2007年に発生した金融危機などで、クライスラーとGMが相次いで破綻したこともあり、税収の激減などで2013年に財政破綻した。その負債総額は180億ドル(1兆8千億円)と、米国の自治体の破綻としては過去最大規模だった。
 市が所有する100年以上もの歴史を持ち、米国屈指の規模を誇るデトロイト美術館には、古代エジプト美術から現代美術まで6万5千点以上もの芸術品を所蔵している。
 その中には、 ゴッホセザンヌなどの絵画もある。
 市は、債務者や市の年金受給者からの圧力で、所蔵する絵画売却で債務返済を検討。
 それに対して、デトロイト美術館のコレクションは、市の財産である以上にデトロイト市民のものであり、市民のかけがえのない財産だと、市民や各地の美術団体が猛反発して、美術館所蔵の芸術品を守った。

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 その実話を、原田マハさんは、ホール・セザンヌが妻・オルタンスを描いた肖像画『 マダム・セザンヌ 』と、その絵をかけがえのない友人のような存在で愛した年金生活者の一市民と、美術館のコレクション担当チーフ・キュレーターを軸にして、守り抜いた経緯をフィクション化して感動的に描いている。

 文庫120ページの比較的短い物語だが、「さすが原田マハさんの作品だな。」と思えるものだ。