この、原田マハさんの新刊『リボルバー』の新聞書籍広告を見た時、今度はどんなアート小説を書いたのだろうと興味を持った。
原田マハさんは、自身がキュレーターやカルチャーライターとしての経験もあり、美術に造詣が深いこともあって、原田マハだからこそ、史実を基にして深みのあるアート小説の数々を生み出している。
アート小説では、ゴッホの壮絶な人生を描いた『やゆたえども沈まず』や、国連本部のロビーに飾られていたピカソの名画「ゲルニカ」を題材にした『暗幕のゲルニカ』や、アンリ・ルソーの絵画を題材にした『楽園のカンヴァス』や、松方コレクションを題材にした『美しき愚かものたちのタブロー』などが、僕は感動した原田マハさんのアート小説として記憶にある。
が、しかし、それ以外でも彼女の小説は、実に感動モノが多く僕は好きで読んでいる。
例えば、『カフーを待ちわびて』『キネマの神様』『翼をください』『まぐだら屋のマリア』『生きるぼくら』『太陽の棘』『奇跡の人』『異邦人(いりびと)』『リーチ先生』などなど、実の読みごたえのあった物語で、原田マハの世界に魅了された書籍である。
今回の『リボルバー』は、アート史上最大の謎とも言われる「ゴッホの死」を題材にしたアートミステリーだった。
読み終わって、この作品もまた、原田マハだからこそ生み出された作品だとつよく感じる物語であった。
ファン・ゴッホの死は、自殺なのか、いや、他殺ではないのか?
オークションに持ち込まれた赤錆の激しい拳銃・リボルバーを巡って、その真相を明らかにしようとするフィクション小説。
これ以上は、ミステリー小説紹介で侵してはならないと僕は思っているネタバレになるので書くのは控えるが、原田マハさんのゴッホ、ゴーギャンに対する強い情熱や愛情が多分に反映された作品だということは確かであると思う。
37歳で他界したファン・ゴッホ、54歳で他界したゴーギャン、この2人を彼女は次のように書いていることだけ紹介しよう。
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残された史料を分析すれば、彼らが不遇のうちに生涯を閉じたというのが自然と導き出される結末だ。経済面でも健康面でも恵まれていたとは言い難い。けれど、ほんとうに彼らは不幸だったのだろうか?
好きなように生き、誰からも指図されず、自由に描き、タブローの新しい地平を拓いた。それは間違いない。とすれば、彼らは──幸せだったと言えないだろうか?
太陽また太陽のタブローを描き続けたゴッホ。身を焦がすほどゴッホに嫉妬し、ついに「彼方の楽園」へ到達したゴーギャン。
ふたりはぶつかり合い、傷つけ合い、苦しみ抜き、のたうち回りながらも、「新しい絵」を描くというただひとすじの道を歩み、誰もが届かない高みへと美の階段を上り詰めていった。
彼らはタブローの自由を勝ち取るために闘った。その事実は、彼らに画家としての幸福をもたらしたとは言えないだろうか?
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この、原田マハさんの2人に対する温かい愛情があればこそ、この『リボルバー』が生まれたのだろうと僕は思った。