池井戸潤の『 七つの会議 』の映画と小説

 現在、公開されている映画『 七つの会議 』が、我が家のロビーで「面白かった」と話題になっていたので、先週、帰宅時に新百合ヶ丘駅で途中下車して観てみた。
 映画の原作となった小説を、単行本が刊行された2012年の秋に、僕は読んでいる。
 それで、今回の映画鑑賞。
 
◇映画『 七つの会議 』
 野村萬斎香川照之をはじめとした豪華キャスト満載といった映画だった。

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 豪華俳優陣それぞれが、さすがと思うほどの演技力に迫力があり、見応えのある、面白い映画であることは確かだった。
 しかし、企業犯罪とそれに関わる善と悪の人物を強調するあまり、企業勤めの経験がある僕は、それらの社内でのあからさまな嫌がらせや駆け引きに「ちょっとオーバーかな?」と感じた部分もあった。
 さらに、映画の2時間弱という制限された時間内で、企業内の様々な闇を描きながら、それに立ち向かう良心(正義)を持った人間を描くには、その深まりにちょっと無理があるのかも知れないと思ったし、数回に分けた連続テレビドラマの方が、もっと主要人物の微細な心の描写が出来て、ストーリーを観客と共有出来るのではないかと思った。

 

◇小説『 七つの会議 』(2012年にブログに書いた読後感想を編集して再録)
 池井戸潤の新刊というだけで、直木賞を受賞した『下町ロケット』や『空飛ぶタイヤ』さらには『ルーズヴェルト・ゲーム』などを思い出して、半ば衝動買いだった。
 今度はどんな内容なのかとワクワクして、電車の中でページをめくる。
        
 一流企業傘下の中堅メーカーが舞台で、第1話から第8話まで、短編小説風に中心人物が入れ替わりながら展開する。
 結局は、企業の中での利益優先や権力争いの波に翻弄されながらも、それぞれの主人公が「何のために働くのか」と、自らに問う物語になっている。
 会社の中での権力争い、ノルマ達成の重圧、リコール級の製品事故の証拠隠滅、その真相究明などなど、企業犯罪の生まれる経過と、それに、むなしく翻弄されたあげく、第一線から消えていく者も描かれて、それらの人たちの心情をリアルに書いている。
 前作のような「読後に元気をもらった」感の物語ではないが、読み応えは十分にあった。
 それは、物語の中に登場する人物が、単なるワルではなく、それぞれの育ちの環境や、親から影響されて形成された価値観を持ち、それぞれ個性を持った人物であり、家庭と会社の狭間で苦しむ人物として池井戸潤がリアルに描いているからだと思う。