仲村清司著『本音で語る沖縄史』を読む

 沖縄についての歴史を、僕は詳しく学んだ記憶がない。
 僕たちが学校で学ぶ日本史の流れに、沖縄の歴史は含まれていなかったように思う。
 僕が知っていることと言ったら、太平洋戦争末期に本土決戦となった沖縄戦の悲劇や、ひめゆりの塔の話を映画などで知った程度で、それ以前の琉球王朝の成り立ちや、首里文化の実態についてはほとんど知らない。
 昨年11月に沖縄を訪問して、首里城や博物館を見学して、それを痛感し、さらに、連日、沖縄については基地問題など、ニュースが流れているにもかかわらず、沖縄の史実についてあまりにも無知なことを反省して、この仲村清司さんが書いた『本音で語る沖縄史』を読んでみた。
      
 本書は、堅苦しい言葉の羅列もなく、実に読みやすく、先史時代から近代までを網羅し、さらに戦後の米軍統治下の沖縄の実態、復帰後の沖縄の変化などをも著した「沖縄の歴史書」となっている。
 著者も「地理的にみても琉球王国が存続したのは奇跡というほかない。」「日本を中心とした地図では、沖縄は絶海の海に浮かぶ僻地のように見えてしまうだろうが、東アジアを中心とした地図から俯瞰すれば、琉球諸島は日本と中国という超大国の中間にあり、同時に東南アジア諸国とつながる始発点のような場所に位置している。」と書いているように、地理的特殊性がもたらす、琉球諸島のその時々の歴史の流れを、沖縄礼賛でもなく、かと言って否定でもなく、冷静な視点で、著者の推測も織り込みながら、丁寧になぞっている。
 また、本書の内容が理解しやすいのは、同時代の日本史ではどのような出来事が発生し、その史実と沖縄史の史実との関連性を詳しく考察しながら書かれているからだ。
 そんな意味では、沖縄を理解する上では貴重な著書と言えるだろう。
 また、最後に著者は、普天間基地の移設問題をはじめとする現在の「沖縄問題」が、その解決の方向でなく、袋小路に陥っていることに対して、「沖縄の人は何を求めているか、日本本土が実直に理解しないかぎり、この問題は円満解決することはないかと思える。」と述べている。
 沖縄に関心がある方には、ぜひ、一読をお薦めしたい著書である。