今朝のNHK・Eテレ「こころの時代」

 早朝5時からのNHK・Eテレ「こころの時代』を観た。
 今朝の「こころの時代」は、昨年9月の「私の戦後70年」のアンコール放送で、シルクロード研究で有名な文化人類学者の加藤九祚さん「こころの壁を超える」だった。
 加藤九祚さんは、今年の9月に発掘調査のために訪れていたウズベキスタンで亡くなられた。享年94歳だったので、93歳の時の収録番組だ。
        
 加藤さんが、埋もれたシルクロードの歴史を知ることで紛争が絶えない現代へのヒントを見つけたいと、考古学発掘を始めたのが70歳過ぎからだった。
 そして、94歳で亡くなるまで現地で自ら発掘調査も行ってきた。
 「世界は遠い昔からつながっていた。そのことが証明されることがうれしい。それらの人々は戦いではなくて生活の中でつながっていたということがシルクロードの肝心なことではないかと思っている。」と語る。
        
 加藤さんは、朝鮮半島の南部で生まれ、10歳のとき父親が学問を身のつけろと、山口県の叔父に預けられる。
 日本での子供時代を「いやなことは忘れていく。つらいことはない。」と笑いながらも、日本に来て叔父お家での日課となっていた馬の世話や、柿泥棒の濡れ衣を着せられ世間体を気にした叔父の体罰など、当時の苦労を話す。
 また、裸馬に乗りながらの馬との心の通じ合いや、寒い日などに馬の肌の温かさに母親への思いを浮かべたとなど、当時を懐かしむ。
 鉄工所で働きながら苦学し、上智大学予科入学。
 その後、志願兵として満洲へ出征。敗戦後は捕虜となりシベリア抑留。
 シベリア抑留中、3人の日本兵が脱走し、仲間を殺して逃亡中の食糧にしていたことを話す。
 「脱走事件・人肉事件ありました。それは計画的なもので、1人の仲間を食料として連れ出し、殺して食糧にした。ソ連兵に見つけられた。腿や尻の部分をちょうど刺身のように切って飯盒にいれたのを,ソ連兵が収容所の一角に並べた。それを見て三晩くらい寝られなかった。あまりにもショックで・・・」
 「どうして、そんなことができるのか。しかし、人間はこういうことができるんだ。人間は、人間を殺してその肉を食べることができるんだ。そういう恐ろしい本性があるということを知った。」と、人間の本性とは何かを突きつけられた体験を、涙を浮かべながら語る姿が印象的だった。
        
 さらに、加藤さんの元気の源になっている探究心を語る。
 「生きるということは、とにかくいいことだ。そうするためには知ることだ。知れば知るほど生きていることはすばらしいと思えるようになる。」と語りながら、命を亡くした戦友を思いながら発掘調査をしている話など、見応えのある放送だった。