ドキュメンタリー映画『ふたりの桃源郷』を観る

 昨日の夜、仕事帰りに「ポレポレ東中野」で、『ふたりの桃源郷という映画を観た。
 この映画は、山口放送が、ある老夫婦と彼らを支える家族の姿を足かけ25年にわたり追いかけたドキュメンタリーなのだ。
           
 山口県岩国市美和町の、電気も電話も水道も通っていない山奥で暮らす田中寅夫さん・フサコさん夫妻。
 2人は、戦後まもなく一からやり直そう、自分たちが食べる物は自分たちの手でつくろうと、フサコさんの故郷に近い山を買って夫婦で切り開く。
 高度経済成長期は、娘たちの将来を考え、寅夫さんが47歳の時に大阪に転居し、3人の子どもたちを育て上げる。
 しかし、夫婦が還暦を過ぎた時、「残りの人生は夫婦で、あの山で過ごそう」と、思い出の山に戻り、第二の人生を山で生きる道を選ぶ。
 畑でとれる野菜、山で採れる山菜やキノコ、湧き水で風呂を沸かし、窯で炊くご飯。古いバスを寝室にして、老いていく2人は山の生活を満喫している。
 しかし、そんな2人にも、やがて「老い」が静かに訪れ、山での生活が困難になる。
 山のふもとの老人ホームに生活の拠点を移すが、「人間何かすることがないといけん」と、昼間は山での農作業に時を費やする。
 そんな老夫婦を心配して、山を離れることを勧める娘達。
 しかし、2人の心は山から離れない。
 結局、大阪で寿司屋を営む末娘の恵子さん夫妻が、山のふもとの町に引っ越して、2人の面倒を見る。
 恵子さん夫妻も、年老いた両親の面倒と、一緒にやる農作業に喜びを見出す。
 寅夫さんは享年93歳で死去。
 フサコさんは、認知酒を患うが娘夫婦と、その後もおじいちゃんと開墾した思い出の山に通うが、おじいちゃんと同じ享年93歳で死去。
          

 老いとは何だろうか。
 老いて生き続けるとは、どんなことだろうか。
 その老いの中で、幸せとはどんなことなのだろうか。
 そんなことを考えさせられる映画だった。


 老いた夫婦2人のやり取り、何ともほのぼのとした幸せがにじみ出ている。
 夫が亡くなったことも記憶になく、「おじいちゃんは何処に行ったんだろうね」と言いながら、山に向かって「おじいちゃ〜ん」と叫ぶフサコおばあちゃん。
 数々の印象に残る場面が、観終わった後も余韻として消えない、そんなドキュメンタリー映画だった。