文庫本のおしゃべり

小川洋子著・文庫『沈黙博物館』
 やっと読み終わった小川洋子の文庫『沈黙博物館』
        
 小川洋子の小説は、『博士の愛した数式』」を読んでいる。
 この小説は、それとはまた違った世界の、幻想的な、不思議なイマジネーションの世界の長編小説だった
 長さは感じさせなかったが、一気には読むことができなかった。
 ミステリー性があって先を急ぎたくなるのだが、少しずつ読まないと、何となく消化不良になりかねない長編小説でもあった。

 亡くなった村人の形見を収集・保存する沈黙博物館の創設のために、老婆に雇われた博物館技師。
 その雇い主の老婆は、コレクションしている死者の形見について、次の様に語る。
「私が目指しているのは、人間の存在を超越した博物館じゃ。何の変哲もないと思われるごみ箱の腐った野菜屑にさえ、奇跡的な生の痕跡を見出す、この世の営みを根底から包み込むような…」(文庫・16ページ)と。
 村で誰かが死ぬたびに、その人にまつわる品を何か1つだけ手に入れる。
 その人の、その肉体が間違いなく存在していたという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する遺品を、どんな手段を使ってでも収集する。
 そして、それを展示する。誰かが見ようが見まいが関係ない。
 人が生きている、あるいは、生きた証(あかし)とは、いったい何なのか。
 死とは生きている終着なのか、そんなことを問いかけてくる物語だった。



司馬遼太郎著・文庫『ロシアについて〜北方の原形』
 「読んだら面白かったから・・」と、出版社ロゴスの村岡編集長の奥さまから、この文庫本が送られてきた。
         
 裏表紙の作品紹介に「この巨大な隣国をどう理解するか」とあり、その後に
「日本とこの隣国は、交渉がはじまってわずか二百年ばかりのあいだに、作用と反作用がかさなりあい、累積しすぎた。長年にわたりロシアに対して、深い関心を持ちつづけてきた著者が、おもに日露関係史の中から鮮やかなロシア像を抽出し、将来への道を模索した、読売文学賞受賞の示唆に富む好著。」と書かれている。
 早速、読んでみようと思う。