「高校生直木賞」の文庫を読んでいる

◇高校生直木賞
 高校生直木賞というのが6年前からある。
 これは、高校生が選考を行う文学賞なのだが、フランスの高校生が選ぶ文学賞の「高校生ゴンクール賞」を模範として創設されたらしい。
 直近の1年間に「直木三十五賞」の候補に挙げられた作品の中から、最終候補作5~6作を決定した後、最も優れた作品を全国の高校生が選考し決定する。
 昨年は、28校の高校生が参加したらしい。
 面白い企画だ。読書離れが危惧されている時代、文部科学省も後援している。

 

◇高校生直木賞の第4回受賞作・須賀しのぶ著『また、桜の国で』
 今、この『また、桜の国で』という文庫を電車の中で読んでいる。
 4年前に直木賞の候補になり、その時、直木賞の受賞作にはならなかったが、「高校生直木賞」を受賞した作品だ。

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 最近文庫になったので読み出したのだが、表紙帯に「ナチス・ドイツに侵攻され、戦火に染まるワルシャワ。日本人外務書記生は仲間との絆を守るため、国を超えて命を懸ける--!」とあるように、大戦当時のポーランドが舞台となっていて、史実に基づいて書かれただけあって、約600ページの長編のまだ中間程度のところを読んでいるが、その展開に引き込まれる。

f:id:naozi:20191227210804j:plain舞台となっているポーランドという国について、僕はあまり知らないので、読みながらホーランドの地図を検索したり、ポーランドの国の歴史を検索したくなったりしながら読んでいる。


 ロシア人の父と日本人の母から生まれた主人公・棚倉慎が、ポーランド大使館の外務書記生として1938年に赴任するところから物語は始まる。
 その息子に対して父は次の様に語る。
「慎がポーランドという国に行くことを、私はうれしく思う。ロシアとドイツ、オーストリア、周囲の強国に食い荒らされ、地図から消えたことのある国。そうした国から見える世界は、今まで我々が見てきたものとはまるでちがうことだろう。そしておそらくは、それこそが、最も正直な世界の姿なのだと思う」「人が歩んだ歴史は一つだが、その姿を見る者の数だけ存在する。基本的に歴史は強国によって語られる。呑みこんだ敗者について思いを巡らせる者はあまりいない。?みこまれた当事者以外はね。そしてその当事者だけが、イデオロギーや利害に関係がない、最も素直な世界を見ることができる」
 このように語り、「おまえがポーランドら見る世界は、過酷かもしれないがきっと美しい。子供のころから、謂われなく虐げられることがあることを知るおまえなら、この国やドイツを覆うまやかしに惑わされることもないだろう。慎、おまえは真実と共にあれ。おまえが正しいと信じることを、迷わす行えるように」とロシア人との混血で育った息子を送り出すのだ。


 ここに語られているポーランドは、地図から消えたことのある国」ということや、主人公が少年時代に出逢うポーランドの少年が登場するのだが、それが「1920(大正9)年に、シベリアで孤児となったポーランドの子どもたち365名を日本が受け入れた」少年で、そのような史実を僕は知らなかった。
 そんな史実があったのかとスマホで検索しながら、また、ポーランドとはこのような国だったのか、このような歴史があったのかと、そんな興味に後押しされながら読み進めている。

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 ちなみに、現在のポーランドは、7つの国(ドイツ・ロシア・リトアニアベラルーシウクライナスロバキアチェコ共和国)に囲まれた共和国である。我が国のように海に囲まれた国では体験し得なかった歴史があったのだろうと知的好奇心も湧く。