映画と文庫本のおしゃべり

 今夜はちょっと時間があるので「映画と文庫のおしゃべり」をしてみたい。


◇映画『天空の蜂』
 先日、映画好きの知人と会ったら「この映画の原作『天空の蜂』は、東野圭吾が20年前に書いた小説だけど、すでに20年前に原発の危険性を題材にしていたというのが、凄いね。東野圭吾は、まるで福島原発事故以降に問題視されていることを予測していたのかと思ってしまったよ。」と言っていた。
 その言葉に興味をもって、時間を見つけて先週帰宅時に、この映画を観た。
           
 大型ヘリコプターがテロリストに奪取され、大量の爆薬物を満載し、無人遠隔操縦によって、福井県高速増殖炉の上空でホバリング
 そのリコプターの設計制作者の子どもが、ひょんなことからリコプターに取り残されて機内にいる。
 テロリストから日本政府へ届いた脅迫状は「現在稼動中や建設中の原発を全て停止しろ、さもなくばヘリを高速増殖炉に墜落させる」というもの。
 子どもの救出と、燃料切れによる墜落を避けるというタイムリミットにスリル満点、ハラハラさせられるストーリーだ。
 そして、原発安全神話を掲げてきた政府の対応や、現場責任者の苦悩と行動。実にリアルな展開に驚いた。
 ただただ、東野圭吾の凄い想像力というか、着眼点に脱帽。
 原作を読むかどうかは、迷っている。


◇文庫・鏑木蓮著『白砂』
 先日、書店に寄ったときに、平積みされていた文庫のPOPの誘いに乗って手にした本が、鏑木蓮著『白砂』だ。
 鏑木蓮の本を読むのは2冊目で、前回読んだのは『賢治の推理手帳Ⅰ・イーハトーブ探偵』だった。
 宮澤賢治が名探偵として登場し、数々の怪事件を鮮やかに解き明かす物語で、推理小説としては面白かった。
 そんなことで「たまにはミステリーも読んでみようか」と思ったのと、帯に「あまりに哀しく、美しいラストに 涙腺崩壊!!」とあって、「涙腺崩壊」というキャッチコピーに「ホント、そこまで言うの?」と思って、読んでみようと買った。
           
 読み終わって「涙腺崩壊」とまではいかなかった。
 しかし、単なる事件捜査の物語ではなく、被害者と加害者の気持ちに寄り添い、そこから事件の全貌と、加害者の殺人に至る動機を、丹念に捜査し、事件の本質に迫る刑事物語としては読み応えがあった。
 それにしても、被害者にも加害者にも、不遇な過去があり、その育ちの闇が、事件の原点になるという、あまりにも哀しい、やるせない物語だ。