映画のおしゃべり

 今日はちょっと時間があるので、先週に観た映画 北の桜守 のおしゃべりをしたい。

 この映画は、吉永小百合の120作目となる映画出演、メガホンは『おくりびと』の滝田洋二郎
 これは、どうしても観ておきたいと思って新宿の映画館へ。
          

◇物語の展開を要約
 どんな物語なのだろうかと、そこに興味があったので、覚えている範囲で内容を要約すると・・、
 太平洋戦争末期の1945年。
 日本の領土だった樺太で暮らしていた家族。
 ソ連軍の突然の侵攻。
 夫・江蓮徳次郎(阿部寛)は戦場へ、妻・江蓮てつ(吉永小百合)と息子2人は、樺太から脱出し、北海道の網走に命からがら辿り着くが、途中、長男は乗船していた船が爆撃を受け行方不明。
 てつは、厳しい自然環境や飢えに苦しみ、貧困と懸命に戦いながら、残った息子1人を立派に育てる。
 その次男の修二郎(堺雅人)は、アメリカでビジネスに成功し、日本初のホットドックストアの日本社長として帰国し札幌に出店。15年ぶりに網走の地を訪れる。
 老いた母は、いまだ帰らぬ夫を待ち続けながら、つつましく日々を過ごしていた。
 修二郎は、てつを引取り札幌で同居する。
 しかし、てつには認知症のような行動がみられて当惑。しかしそれは、戦禍によるPTSDの後遺症で、残酷な戦争の傷を心に抱えていたのだ。
 そんな母を連れて、思いでの地を一緒にめぐる。
 その途中、長男の死を思い出したてつは、気が動転し入院する病院から抜け出して行方不明になる。
 もうあきらめていた2年後に、修二郎は桜の世話をするてつと再会する。
 要約すると、このような内容なのだが、
 戦争に翻弄された人々の悲惨さ、その中での親と子の愛情、夫への愛を一生貫く女性の姿が、切なく描かれていた映画だった。

◇印象に残るシーン
 夫と別れ、子供たちと樺太を脱出するときに、てつは、やっと樺太の地で咲いた桜の花を見ながら、家族で一緒にまた桜を見ましょうと約束する。
 その時の「桜は、満月の夜に満開になるのよ」という言葉と、桜の花と満月の月の美しい映像が印象に残る。
 もう一つ、
 網走での厳しい生活を支えてくれた運送会社の社長(佐藤浩市)が、結婚を申し込もうと訪ねたとき、てつは、白装束姿でもって迎え、その申し入れを暗に断る。
 その時の吉永小百合は、ほんとうに美しかった。
 ついでにもう一つ二つ、
 樺太で一緒だった男が網走で警官をしていて再会。その警官(岸部一徳)が、自分はシベリアで仲間を裏切りスパイとなって生き残り、日本に帰ってきたことを懺悔するシーンも印象に残ったし、笑福亭鶴瓶が扮する屋台の親父もよかった。

◇メガホンをとった滝田洋二郎監督
 かなり前衛的な試みをしていることに驚く。
 なんと実写映画の中に、舞台演技パートを導入して、物語のリアルさを強調する試み。
          
 滝田洋二郎監督は、もう亡くなったが友人だった俳優の山田辰夫さんの高校時代の同級生だ。
 富山県高岡から、2人で映画製作を目指して上京したと聞いたことがある。
 滝田洋二郎監督がとった日本アカデミー賞最優秀作品賞の『壬生義士伝』でも、日本アカデミー賞最優秀作品賞・最優秀監督賞を受賞し、「アメリカ映画の祭典」のアカデミー賞では日本映画初の外国語映画賞を受賞した『おくりびと』にも、山田辰夫さんは出演していた。
 山田辰夫さんが存命だったら、この映画でも、きっと出演していただろう。その時は、どの役柄だったろうかと思い巡らしながら、劇場を後にした。