『物を売るバカ』という新書

 『物を売るバカ』 こんなタイトルの新書が目にとまった。
 最近、「産直農産物大市」に関わったり、直売店ならどんな店舗がいいのだろうかと見て回ったりしているから、こんなタイトルに目が魅かれたのかも知れない。
 川上徹也著 『物を売るバカ』
           
 著者の川上さんは「はじめに」で、
 この本は、決して「物を売る商売」をバカにするという意図で書いたものでなく、物(=商品)だけを売って飛ぶように売れる時代はもうとっくに終わって、どんなにいい商品でも、それだけを売ろうと頑張っても、普通では売れない時代なのだと書いている。
 そして、現在においては「商品だけを売ろうとするほどドツボにはまる」と言う。
 商品が売れる要素は「価格」「品質」「広告」「流通」が重要だが、それだけではやれない時代になったと言うのだ。
 例えば「価格」を下げると一時的な効果はあるかも知れないが、結局、商品の価値を下げてしまい、もっと安い商品があれば値段につられて買った客は去る。
 「品質」はいいに超したことはないが、それだけで差別化するのは難しいし、「広告」や「流通」で勝負するのにはお金がかかる。
 これからの時代は、商品が生み出され、作られ、販売する、きちんとした「世界観や哲学」「志」「理念」を持って、その『物語』で商品を輝かせて勝負をしろと言っている。
 「満足してもお客さんがリピーターにならない現実」
 「簡単にあなたの店のことを忘れてしまうお客さん」
 「価格を下げると、価値も下がる」
 「人類は大の物語好き」
 「人類共通の感動のツボを押す」
 などと、ハウツー的に、今の時代に人を引きつけるポイントを解説している。
 後半は、それらを実践している事例を取り上げているのだが、なるほどと思わせる視点を教えてくれる内容だ。

 この著書を読みながら、
 僕らも、僕らが持っている「志」や「理念」を、もっと全面に押し出して、その「物語」を知ってもらうことをしたらいいのではないかと思った。
 「物語」に共鳴したら、人は人に話したくなるし応援したくなるらしい。人が人を呼ぶためには「物語」がいるようだ。
 読んでいて、それは、農産物という商品だけでなく、僕らが社会づくり運動としてやっている「子ども楽園村」や「特講」にも当てはまると思った。