友人の雑誌編集者でありライターのTさんと、先日お会いし、焼き鳥を食べながら、互いに、最近読んだ小説談義をしたときに「真山仁という作家は、なかなか面白いものを書くよね。」と言ったことを覚えていてくれて、その数日後、「これ、読んでみる?」と持ってきてくれたのが、この真山仁の新刊『雨に泣いてる』(今年1月発行)だ。
阪神大震災の取材を経験した新聞記者が、再度、東日本大震災の取材をするという舞台設定だ。
20年前の阪神大震災報道で特ダネとなった記事。
しかし、その後の展開で、その記事を書いた記者の心には、大きな傷となって残る。
それを克服するためにも、記者として宮城県の被災地に立って取材する。
生々しい震災現場の悲惨な状況を、被災者の心情も感じつつも、「事実を伝えるという使命を負った記者としてのあり方とは何か」を問い、葛藤しながらも取材し、リアルに被災状況を描写し東京に送る。
そして、他社との報道競争を繰り広げる新聞社。
ひたすら特ダネを求めるデスクや、社主の思惑を気にして特ダネを潰す社の幹部。
それらに翻弄されながら、報道とは・・ 記者にとって特ダネとは・・
そのような、報道界が持ている大きなテーマを問いながら、物語が展開している。
そして後半は、地元で敬われている僧侶被災者が、実は過去の重大事件に結びつくというミステリー小説だ。
さすが、新聞記者出身の真山仁の小説だと唸ってしまう力作だと思った。