今日の僕のおしゃべり

 12日の新聞夕刊に、新春恒例の宮中行事歌会始の儀」が行われた記事が載っていた。
 実は、出張続きでゆっくり新聞も読んでいなかったので、3日ほど前にたまっていた新聞に目を通していて読んだのだが、そこに紹介されていた天皇陛下の歌が、なぜか心に残って新聞を捨てないで残している。
         

     津波来し 時の岸辺は 如何なりしと
                 見下ろす海は 青く静まる

 「天皇陛下東日本大震災のお見舞いで昨年5月、岩手県を訪れ、釜石から宮古にかけての沿岸をヘリコプターから見た時の印象を詠まれた。」と記されていた。

 もちろん僕は、短歌についての知識もあまりないし、作風や技法的な良し悪しなど分からない。
 しかし、その素人の僕にでさえ、この歌を詠んだ心境と、詠み人の人間性がイメージできるのだ。
 自然は、津波の大惨事を起こしながらも、その一方で、こうして、何事もなかったかのように「青く静まる」海を目の前にみせる。人智を超えた、そんな自然の営みに出会ったときの戸惑いも含めた心境が、この歌に込められているように僕は感じたのである。

 そして僕は、震災10日後に被災地である仙台の若林区に支援物資としてヤマギシの生産物をワゴン車に積んで運んだ時に目にした風景を思い出したし、さらに、以前にTVで岩手県花巻市出身の宗教学者山折哲雄氏が被災地を訪ね、そこで感じたこととして〝無常観の二面性〟について語っていたことを、この歌で思い出した。
 その時のメモによると、山折氏はこの様なことを言っている。
「見わたす限り広がる自然の残酷な仕打ちとしての、瓦礫の向こうの海の美しさ、後ろを見れば山河の美しさ。その人智を超えた二面性の自然の存在。ものみな死滅への道と再生への道、明暗この二面性の〝無常〟を、日本人は葛藤しつつ受け入れざるを得ないことを知っている。」
 こんな山折氏の言葉を思い出しながら、
 おこがましいが、強いて言えば、詠み人・天皇人間性の一端に触れたような感じがしたのである。