『脱限界集落株式会社』を読む

 先日、雑誌編集者でありライターのTさんが、「これ、面白いよ」と言って持って来てくれた本が、この黒野伸一著『脱限界集落株式会社だ。
           
 著者の黒野伸一さんは4年前に限界集落株式会社という本を出している。
 農村集落をテーマにした小説だと気にはなっていたが、僕はまだ読んでいない。
 本来ならば、前作のその本から読むべきなのかも知れないが、NHKの5回連続土曜ドラマ反町隆史谷原章介が出演で放映していたので、2回ほどは観ていたから、おおよその物語の内容(過疎化と高齢化により消滅の危機にある小さな集落を、農業法人化して復興させる)は知っていた。
 その物語の続編だなと思って読みだしたら、なかなか面白い。

 今回の物語は、
前作の『限界集落株式会社』で書かれた内容の、限界集落としての消滅の危機を脱してから4年。
  村には、さらにショッピングモールが誕生し、有名ブランドのテナントも入って近くの町からも客が押し寄せるほどになっている。
 しかし、その一方では、駅前にある商店街はシャッター通りとなっていて、その駅前商店街の再開発の話が持ち上がり、高層マンションや公共施設を備えた「コンパクトシティ」を建設するモールを作る動きが出る。
 そんな外部資本による大型投資によって、田舎の良さがなくなってしまう事に疑問を感じる人達(都会の生活から逃れてきた無気力な若者も含めて)が、その再開発計画に反対して、地域密着型の商店街に復活させる物語だ。

 「ハゲタカが跋扈(ばっこ)する資本主義」に対して「コミュニティを尊重し、大規模投資より交流を大切にする地域密着型の草の根資本主義」の物語の展開に、現在、叫ばれている「地方創生」政策が思い浮かんで、地方では「こんな事が実際に繰り広げられ、あるいはハコモノ開発が起こっているのかも?」と想像して、現実味を増して面白かった。
 さらに、これからの社会における地域社会に根ざした店舗などの役割というか、共存共栄のあり方についても示唆する内容もあり、興味を持って読み終った。