原発を考えさせられた漫画とNHKスペシャル

◇漫画『いちえふ』
 金曜日の夕方、書店に寄ったら単行本が平積みされているコーナーに、ビニール包装のコミック本が一緒にあった。
 そう言えば、先週、新聞広告で「モーニング」に連載中の話題の漫画が単行本化されたというのが掲載されていたのを思い出して手に取ってみる。
 新人賞「MANGA OPEN」の大賞受賞作で、国内外のメディアから取材が殺到している福島第一原発作業員が描く原発ルポルタージュ漫画だと言う。
 それなら読んでみようと買って、帰宅の電車で読む。
           
 コミック『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1)』竜田一人著
 「いちえふ」とは、福島第一原子力発電所の通称。
 ここに描かれるのは「フクシマの真実」ではなく、著者がその目で見てきた「福島の現実」だと言うだけあって、福島第一原発内部の建屋の配置から、作業員の休憩所の備品配置、作業現場に入るときの服装や装備を入念にする手順、現場での作業の様子が、事細かく描かれている。
 驚くことに、著者は6次下請け作業員。そこまでいくと賃金も低い。
 原発で昔から働いていたという地元の作業員の言葉 ─ 現実を受け止め、自分のやるべきことを語る言葉 ─ が、胸に重く迫る。
 著者である作業員が「東電に恨みとか怒りとかないんスか?」という問いに
 「住む所奪われて怒らねえわげがねえべぇ。だけども事故を起こしたのは、俺達の職場なんだっぺ。ここをなんとがでぎるのは俺達しかいねぇ。それに俺達が、ここをどうにがしねがったら、戻りてぇ人だって、戻って来れねぇべ。」 
 「起きちまったもんは、恨んだって怒ったって、元には戻んね。出来る事やっていぐしかねぇ。」

 地元作業員は、このように語る。
 このような人によって、今のフクシマが支えられているのだと思った。


NHKスペシャル
 漫画『いちえふ』を読みながら帰宅して、食事を終えて新聞のTV欄を見ていたら、10時からNHKスペシャルで、先週の日曜日に放映した原発廃炉への道』の続編を放送するのを知った。
 偶然というか何というか・・・。
 今回のテーマは、この先何十年かかるともしれない廃炉作業の成否を左右する課題のひとつ「作業員の確保」問題だった。
 被ばくを余儀なくされる現場では、既に作業員の不足が危ぶまれ、このままでは熟練作業員もいなくなり、技術の継承もできなくなると、廃炉に向けての長期シミュレーション検証チームの専門家は危惧する。
 あらためて廃炉の道のりが困難を孕んでいて、その第一歩の現在の作業が、漫画『いちえふ』に描かれていることともダブって、考えさせられる内容だった。