約30年ぶりの懐かしい友人に会う

 昨夜、ほんとうに、ほんとうに、懐かしい友人に会って、楽しいひとときを過ごした。
             
 その懐かしい友人の彼とは、僕がヤマギシに来る前の某電機会社の同僚だ。
 彼は、秋田工業を卒業して入社してきた僕より4歳下の後輩。
 部署は違ったが、関連する仕事に就いていたので、入社早々からの付き合いだった。
 特に、僕が20歳代後半に労働組合役員になって、青年婦人対策部という専門部を担当することになった時、彼は中心的活動メンバーの1人で、一緒に行事などの企画運営をやった仲間だった。
 その彼が、神奈川県川崎市の会社を3月末で定年退職し、岩手県北上市に引っ越すというのを年賀状で知ってメールをしたら、ぜひ会おうとなったのだ。
 彼もそうだったと言っていたが、僕も「暫くぶりで分かるだろうか」と不安を抱きながら、待ち合わせ場所に行ったら、僕を見つけて駆け寄ってきてくれた。
 彼も、年相応な風貌にはなっているが、一目で彼だと分かった。
             
 居酒屋の席に着き、時の流れを振り返ってみたら、彼と顔を合わせるのは28年ぶりで、彼と本当に濃い付き合いをした時からは、すでに30年以上が過ぎていた。
 彼は高校時代からギターを奏でるミュージシャンで、社内の仲間とバンドを組んでいた。
 当時、若い組合員向けに年末に催すダンスパーティでは、彼のバンドが活躍し、彼はギターを弾きながらビートルズの「イエスタディ」などを歌うカッコイイ青年だった。今でもオヤジバンドを時々やっているという。
 そんな彼とは、年末のダンスパーティや夏のキャンプなどの組合活動企画を夜遅くまで練ったり、一緒に赤提灯で飲んだりと、個人的にも付き合った。
 「突然、会社を辞めてヤマギシに行くって聞いたから、ビックリして狐につままれた感じでしたよ。でも、ちっとも変わりないですねぇ。」
 そんな切り口から、28年ぶりだというのに、会って話し始めたら、僕たちの青春時代のいろいろな記憶が蘇って、次から次と当時の仲間や同僚、先輩の名前が出て、それぞれの消息を聞かせてもらったり、某電機会社の現状を教えてもらったり・・・。
 それぞれが、それぞれの道を歩み、それぞれの人生を紡いでいる物語を聞いた。
 あっという間の3時間、気付いた時には9時半を過ぎていた。
             
 「また会いましょうって、別れたいけど、今まで30年も会う機会がなかったのだから、次に会えるかどうか分からないですね・・・」
 そんなことを、彼独特の冗談風に、笑顔で言って、握手に力を込めて、余韻を残しながら、僕たちは別れた。
 懐かしい友人は、素敵な笑顔に彼の人生が刻まれていた。