通勤電車で読んだ文庫のおしゃべり

 今夜は、ちょっと時間があるので書籍読後についてのおしゃべり。

 浅田次郎『一刀斎夢録』(上・下)が文庫化されたというのを新聞広告で知って、早速読み始めたのが今月上旬。
             

 僕にとっては、通勤電車の中が主な読書時間なのだが、考えることがあったり、急いで読んでおきたい資料や、車での出張もあって、この文庫は途切れ途切れの読書になってしまった。
 それでも、途中で興味を失うことなく最後まで読ませてくれるのだから、さすが浅田次郎である。
 浅田次郎新選組三部作といわれる著書は、『壬生義士伝輪違屋糸里』、そしてこの『一刀斎夢録』なのだ。
 壬生義士伝は、新選組隊士としては、今まで語られることがなかった南部脱藩の隊士・吉村貫一郎を描いたものだったが、本と映画とTVで、それぞれに感動した物語だった。
 その後に出た輪違屋糸里は、まだ読んでない。
 それより先に『一刀斎夢録』を手にしたのは、新選組隊士として有名な斎藤一を描いた物語だと知ったからだ。
 新選組三番隊隊長・斎藤一、何度も名前を変えながら、維新後は警察官にもなって、大正4年まで生きていた。
 大河ドラマ「八重の桜」を観ていたら、戊辰戦争後には会津藩主の松平容保が仲人をして会津藩士の娘と結婚している。
 ますます、斎藤一に興味を持って、この文庫を読み始めた次第だ。
            
 読み終わっての感想は、さすが浅田次郎の物語だけあって、浅田史観を駆使しながら幕末から明治にかけての時代を読者にイメージさせ、その流れを納得させながら、時には感動させる話を織り込んで構成されている。
 これから読む人のために、「ネタバレ」は避けるとして、僕は次の2点の浅田説に特に興味を持った。
 一つは、坂本龍馬暗殺の真犯人が、左利き居合剣士の斎藤一だという説。
 二つ目は、西南戦争が、西郷隆盛大久保利通が仕組んだもので、士族反乱に終止符を打ち、新しい日本を建設するための出来レースだったという説。
 そう考えないと、新政府に反乱して朝敵となった西郷隆盛銅像が、西南戦争の記憶が残る明治の末に、上野に建つはずがないという浅田説に納得してしまった。