「夕刊を読んで」のおしゃべり

地井武男という俳優
 帰宅の電車の中で夕刊を読んでいたら、「偲ぶ」という紙面コーナーに、先月29日に亡くなった地井武男さん(享年70歳)のことが載っていた。
           
 僕も、地井武男という俳優は好きな俳優だった。
 先月末から今月初めはモンゴル出張だったので、訃報を知ったのは帰国して不在中の新聞を整理しているときだった。
 新聞のタイトルにも「人柄がにじむ演技で親しまれた俳優」とあるように、確かにどのような役をやっても、印象に残る、観る人を引き付ける演技をしていた。
 そんな中でも、僕にとって、俳優・地井武男さんと言ったら、何といっても「北の国から」で演じていた主人公・黒板五郎(田中邦衛)の友人役の木材会社の社長が印象に強い。
 もうかなり以前になるが、妻と北海道の富良野を訪ねたとき、「北の国から」のロケ地を観光したことがある。
 田中邦衛はもちろんだが、地井武男も、その辺から長靴をはいた姿で出てくるのではないかと思ってしまったという記憶がある。それくらい、木材会社の社長役は印象に残る、人間味あふれる役を演じていた。
 
山田辰夫という俳優
 電車の中で、地井武男の事を考えていたら、亡くなったもう一人の俳優・山田辰夫さん(享年53歳)の事を思い出した。
 「そういえば、辰夫さん(僕たちはそう呼んでいた)が亡くなったことの知らせをもらったのは、今日のような暑い日だったな」と思って、帰宅して調べてみたら3年前の7月26日だった。
 僕は、以前にもブログに書いたが、辰夫さんが出演した映画のシナリオ本を3冊持っている。
 宮部みゆき原作の小説が映画化された「理由」。
 浅田次郎新撰組の無名隊士のひたむきな「義」の姿を描いた「壬生義士伝」。
 アカデミー賞を受賞して話題となった「おくりびと」。
            
 「理由」と「壬生義士伝」のシナリオ本は辰夫さんが直接プレゼントしてくれたサイン入りの本だ。
 「おくりびと」は亡くなられて暫くたった後に奥様から「辰夫が生きていたらきっとプレゼントしたと思うから」と、送られてきた。
 辰夫さんが出演した映画は多い。
 ほとんどがわき役であるが、個性派俳優として味のある役を演じていた。
 そんな辰夫さんは、本をよく読んでいた。時々「最近どんな本を読んだの? いい本あったら貸してよ」と案内所に寄ることがあった。また、会の機関紙「けんさん」に、当時、僕が担当して若者をインタビューして連載していた「明日・次代を創る」を楽しみに待っていてくれていた。
 無愛想で人付き合いは決していいとは言えない辰夫さんだったが、男の優しさを心の奥に秘めていた。それが演技にも現れていた。
 そんな辰夫さんの演じたシナリオ本。自分の台詞に方言のアクセントを鉛筆で加えてある。
 「いつか、時期をみて、奥様にお返しするのが一番いいのだろうな、受け取ってくれるかな」と、いつも思っている。