僕は、この「ほのかなひかり」というタイトルで、この文庫本を手に取り、
表紙の次のページに、
たとえそれが
どんなに小さくて頼りない光であっても
歩む先に見えるのなら
人は生きていけるのです
こんな言葉が書かれていたので、何となく、この言葉に惹かれて「読んでみたいな…」と思って、通勤電車の中で読み始めた。
この『ほのかなひかり』は、全部で8編からなる短編集。
1篇が約30ページ。
ちょうと僕が通勤する町田駅〜新宿駅間で読み終わる長さだった。
この通勤電車内の時間が、僕にとって気分転換と、時には疲れた脳を癒す空間で、僕はそのために小説の世界に入っている。
最初の1篇の「聖夜のメール」を読んで、
「森浩美って、どんな作家なんだろう」と思って最後の解説を読む。
解説を読むまで、恥ずかしいが僕は「森浩美」を女性だと思っていた。
なんと、男性で「あの歌の作詞を書いた作詞家?」と驚くほど名の知れた放送作家出身の作詞家だったのだ。
「聖夜のメール」では、突然、夫を事故で亡くした主人公の切ない心の揺れや、母を思い、亡くなった父の思い出を大事にしようと、けな気に振る舞う子供こころ。
それに心打たれて「こんな心理描写が表現できるなんて、どんな作家なのか」と思っていた。
男性が書いた小説だと知った時の、「えっ、こんな心模様を描いたのが男性なの?」という驚きと、なぜか落胆に似た感情が湧いてしまった。
まあ、そのことは別として、
解りやすい、読みやすい、そんな短編集だったが、僕がぐっときたのは、いま書いた「聖夜のメール」と7編目の「褒め屋」の2編だった。
一気に8編続けて読むというより、時間のある時に、1編ずつ読むのがいいと思う。
それにしても、
たとえそれが
どんなに小さくて頼りない光であっても
歩む先に見えるのなら
人は生きていけるのです
なんと含蓄ある言葉だろうか。