先々週の土曜日夜のNHKスペシャルで、岩手県の津波被害を受けた地域の遺体安置所で「復元ボランティア」をしている「復元納棺師・笹原留似子さん」の事を特集していた。
実は、僕はこの放送を最後の部分の10分程度しか観ることが出来なかったのだが、それでも「凄い人がいるなあ」と気になっていた。
先週、書店に行ったら偶然に笹原留似子さんの著書2冊が平積みになっていた。
「あっ、この人だ。」と思って、放送でも紹介していたスケッチブックの絵と文章をまとめた『おもかげ復元師の震災絵日記』を開いて立ち読みをしたのだが、書かれている言葉があまりにも心に染みこんでくるし、目頭も熱くなってきそうなので、その横に平積みされていたエッセイ集の『おもかげ復元師』も合わせて購入してしまった。
この本を三重出張の電車や新幹線の中で読んだのだが、読み出してすぐに「これはヤバイぞ。」と後悔した。
もう、涙なしでは読み進められない内容の連続なのである。
映画「おくりびと」で納棺師という職業は知られるようになったが、笹原さんは日本で数少ない復元納棺師なのだ。
その技術、損傷の激しい遺体でも生前の表情に復元する技術を、昨年の震災、津波で亡くなった人達の復元に、ボランティアで取り組んだ(今も取り組んでいる)活動を綴ったノンフィクションなのである。
あまりにも凄い内容であるし、「死とは何か」そして「今、生きるとは何か」を正面から考えることを突きつけられる。
僕にとっては、深い感動というか、あまりにも衝撃的な読後なので、まだ、僕はその感動を的確な言葉で記すことが出来ないでいる。
震災以降、多くの震災関連の本が出たし、何冊かは目を通したし、震災の一端に触れた読後を持ったが、この著書2冊は、また別の視点から震災の現実を知った感じだ。
復元納棺師・笹原留似子さんの、その時その時のドラマ、遺族を気づかう心、死者と遺族への深い深い思いやり、そして笹原さんの生き方に触れ、これほど心打たれたノンフィクション読み物に出会ったのは最近ではなかったことだ。
何と言っても、綴られている「復元納棺師」としての日々のエピソード一つ一つに、心を揺り動かされるのだ。
一言で「こんな凄いことを日々やり続けている人がいるんだな」ではすまされない、何かを教えてくれる笹原留似子さんの著書2冊である。
そして、笹原留似子さんの職業人としての姿勢や、生き方に、ただただ敬服する。
多くの人に、一読をお薦めしたい。