池井戸潤の『ルーズヴェルト・ゲーム』を読む

◇2週間ほど前に、サガワさんから「なかなか面白い。感動もんだよ。」と教えてもらっていたのだが、モンゴル出張の資料づくりなどで、時間的にも頭の方もいっぱいで余裕がなく手に取るのが昨日の日曜日になってしまった。
        

◇この小説、池井戸潤直木賞受賞後の第一作だ。
 直木賞を受賞した『下町ロケット』は下町工場の技術や職人魂を描いた小説で、感動したというか元気をもらったような、清々しい読後感を味わったので、その直木賞受賞後の第一作とあって期待してパージをめくった。
 読み進めていくと、期待した通り先を急ぎたくなる展開で、昨日の日曜日の多くの時間をついつい費やしてしまう結果となったほどだ。

◇このタイトルも面白い。「何だろう??」とページをめくる前に考えてしまう。
 途中でその説明があるのだが、野球を愛したルーズヴェルト大統領は「一番面白い試合は8対7だ」と言ったことがルーズヴェルト・ゲーム=奇跡の逆転劇」らしい。
 会社の業績悪化という環境の中で、社会人野球の廃部が取り上げられ、その両方での人間模様の展開に引き込まれる。
 簡単に言えば、最後は企業も野球も奇跡の大逆転をするというストーリーなのだが、さすが池井戸潤の小説だ。期待を裏切らない。

◇この本の帯には
「監督に見捨てられ、主力選手をも失ったかつての名門、青島製作所野球部。創部以来の危機に、野球部長の三上が招いたのは、挫折を経験したひとりの男だった。一方、社長に抜擢されて間もない細川は、折しもの不況に立ち向かうため、聖域なきリストラを命じる。廃部か存続か。繁栄か衰退か。人生を賭した男達の戦いがここに始まる。」とある。
 一押しの小説である。

◇実は、僕がヤマギシに来る前に勤めていた会社にも社会人野球があって、都市対抗などで度々優勝するチームだった。
 僕が在籍していた生産管理部の職場にも、隣の職場の総務部にも野球部員がいたし、応援にもよく行っていたから、社会人野球を存続させる環境も、彼等の置かれている立場や生活もよく知っている。
 そんなことで、野球部に所属していた何人かの昔の友人の顔を思い出しながら読んでしまった。
 甲子園でホームランを打ったという捕手のF君は、後にプロに転向するほどの正捕手がいたので、いつも出番がなく悩んでいた。同僚と彼を連れてよく飲みにも行った。
 隣の部署のK君は、直球を打ち返せばホームランになる確率が高いと言われたスラッガーだった。某球団にドラフト指名されたが、プロの変化球に太刀打ちできなくて3年でやめて実家の家業を継いだ。プロに入団するときの壮行会で彼はバットを一本職場に記念に置いていった。
 僕が在籍していた事業場ではないが、プロ球団に入団して活躍した選手も何人かいる。
 もう20年以上前の話だが、そんな野球部の選手の顔を、今、懐かしく思い出している。