年末年始に読んだ『 宝島 』が直木賞を受賞

 第160回芥川賞直木賞が、16日発表された。
 その直木賞に、僕が年末年始に読んで感動した真藤順丈さんの『 宝島 』が選ばれた。

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 『 宝島 』については、1月4日のブログにも読後感想を書いたが、物語の舞台は、沖縄における戦後から本土返還までの20年の米軍統治下時代だ。
 その時代の沖縄で、幼馴染のグスク、ヤマコ、レイという男女3人が固い絆に結ばれながらも、不可抗力的な、理不尽な米軍統治の激動の時代の流れに翻弄されながら、グスクは警官になり、ヤアコは女給をしながら教員免許を取って教師になり、レイはアウトローの世界で、それぞれが前向きに生きる3人の青春時代の物語だ。

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◇僕はブログの読後感想の最後に、
普天間基地移設に伴う辺野古の海に土砂投入が始まり、それについての県民投票が実施される今、本土に住む私たちは、どれほどの沖縄の人たちの心情を知っているのか、子どもたちが育つ頭上を戦闘機が飛び交う環境がいかなるものか、それを考えさせられる物語である。沖縄を沖縄の問題として見過ごしたくない人には、必読の書籍であるのは間違いない。フィクションの物語であるからこそ、現在まで続いている沖縄問題の本質が浮き彫りに描かれた書籍である。」と書いた。(詳しい読後感想は2018.1.4ブログ記載参照)

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◇読売新聞の〈顔〉欄でのインタビューに、東京出身の真藤順丈さんは、
「沖縄の1950年代から土復帰までの激動期を、3人の若者の成長と重ね、活写する。その時代を書けば、現代につながる米軍基地問題などを取り上げることになる。書き手がよそ者の自分でいいのかと悩んだが、軽妙な語りを加えながらエンターテイメントに仕上げた。」と答えている。

朝日新聞の〈ひと〉欄でも、真藤さんは、
「米統治下という特殊な状況で起きることを普遍化したのは、外の人間だからできた切り口。沖縄のことを考える一助になれば」と答えている。

東京新聞の〈この人〉欄では、
ルポルタージュではこぼれ落ちるものをすくい上げるのが小説の仕事。沖縄の外の人間だから描けるものもあると思えた。」と答え、辺野古沿岸部への土砂投入強行に対しては「日本人全員が自らのこととして捉えるべき問題だと思う。それは自分が小説で描きたかったことでもある。」と述べている。

◇さらに東京新聞の受賞インタビュー記事の中では、
辺野古(名護市)への土砂投入のニュースが流れるが、沖縄の問題は常に起き続けている。われわれ全員で考えなければいけない。」「本土の日本人が沖縄問題を考えるときの一助になればいいなと考えている、ぜひ読んで下さい。」と結んでいる。