先日、三重県のヤマギシの村に出張したとき、オキ○○さんから「これは面白いぞ!」と部厚い本を見せられた。
その本は、『 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか 』だった。
この本が出たことは新聞書籍広告で知ってはいたが、価格が2,000円を超えることもあって、入手をちょっと躊躇していた。
「やっぱり・・・。そんなに面白いなら・・・」と、今回、読んでみた。
野球選手としての落合。監督としての落合。僕も新聞紙上では関心を持って追いかけていた。
それは、落合がロッテオリオンズに入団する前は、僕が昔勤めていた東芝の府中市にある工場の社会人野球チーム「東芝府中」で活躍していた選手であり、僕が労働組合に関係していた当時、何かの企画で講演をお願いして話を聞いたこともあったからだ。
この本は、その落合監督時代の中日ドラゴンズを、8年間取材した記者・鈴木忠平氏の476ページの大作なのである。
実に内容の濃い、読み応えのある、落合博満という野球人のプロフェッショナルとしての人間像と、その哲学を深く掘り下げたスポーツノンフィクションで、読み出したら、その迫力に引きづり込まれた。
落合が中日ドラゴンズの監督を勤めたのは2004年から2011年まで。
監督1年目に開幕投手を担った川崎憲次郎。「ミスタードラゴンズ」と称される立浪和義からレギュラーを奪う森野将彦。日本シリーズで完全試合目前の山井大介から岩瀬仁紀への交代劇を目撃した中継ぎの岡本真也。スカウト部長だった中田宗男。球団代表を務めた井手峻をはじめ、福留孝介、宇野勝、吉見一起、和田一浩、小林正人などなどの登場人物が、落合の采配や行動に戸惑い、葛藤し、悩みながらも「何か」を掴んでいく経過の心情吐露が克明に書かれている。
監督としての采配、選手の指導や起用、マスコミとの付き合い、それらのプロ野球界の既存の常識を、多くを語らず覆しながら、結果的に輝かしい実績(4度のリーク優勝)を残し、周りから理解されずとも、自分のプロ野球人哲学を通し続けた落合監督。
その裏にはどのような考えがあったのか、実に心打つ物語となっている。
プロの世界で生きるとは何か、自分が追い求めた哲学を実践するとはどんなことか、それらをいろいろと考えさせられる連続なので、野球にそれほどの興味がなくても、一人の男の生き様に感動するに違いない。
ぜひ、一読をオススメの書籍である。