NHK・Eテレ「こころの時代」を観る

 日曜日の朝、僕は5時から放送されるNHKEテレの「こころの時代〜宗教・人生〜」を楽しみにして観る。
 今日の放送は、哲学者の梅原猛さんの『私にとっての“3.11”新たな哲学に挑む』だった。
 (観ながらのメモを頼りに印象的だったことをまとめてみたい)

 梅原さんは、昨年の大震災を機に、あらためて「自然は凶暴な父であり、慈悲の母だ」というのを認識し、この震災を「文明災」と位置づけ、「新たな哲学」に着手したという。
 17世紀のルネ・デカルトの「我思う、ゆえに我あり」という考えから始まった、人間が自然を支配できるという西洋哲学に代わって、
 日本の伝統思想をはじめ西洋哲学以前の太陽や水を神として崇拝する考えにある、自然と共存していた人類の叡智を、現代に甦らせ、これからの人類が生き続けられる思想(哲学)を構築したいと試みている。
 梅原さんは40歳まで西洋哲学を研究していたが、自然を人間が支配できるという考えが基にある西洋哲学に限界を感じて、
 縄文・弥生時代から流れている日本文明の中にこそ、環境問題をも含めた現代社会の問題を解決する道があるのではないかと、アイヌ文明の研究をする。
 その中で、自然と共存する考え方が織り込まれたアイヌ民族イオマンテの儀式に出会う。
 その後、世界各地の文明発祥の地を訪れ、西洋哲学以前の文明には、自然を崇拝しながらその中で自然と人間が共存している思想があったことを確認する。
 それは、エジプトのアラーの神(太陽崇拝)であり、日本における太陽を神格化した天照大神なのだという。
 そして梅原さんは
 日本人の中に縄文・弥生時代から流れている思想であり、仏教においては『草木国土(そうもくこくど)悉皆成仏(しつかいじようぶつ)』こそが、これからの人類を存続させる思想なのではないかと語る。
 話の中に、この『草木国土悉皆成仏』の考え方が、江戸時代の画家・若冲の絵や、宮沢賢治の童話にも息づいていることを例にして説明していた。
 30年来、原子力発電の危険性を説いてきたが、反対を強く主張しなかった自戒。高齢という自分に残された有限の時間。そんな立場から、誰に遠慮することなく、やるべきことがあると、新たな「人類哲学」に挑む梅原さんが熱く語る放送だった。