北方謙三著『楊令伝・第2巻』を買う

 文庫本『楊令伝』15巻は毎月1巻ずつ出る。
 集英社では、文庫『楊令伝』読破応援企画として、「Club楊令伝」会員募集をしている。
「どうせ、読むなら会員登録したらいいですよ」と教えてくれたのは、以前にちょっとだけ中国語講座に参加した時の知人からのメールだ。彼は長男と同い年なのだが北方謙三の大ファンで、僕に『水滸伝』を勧めてくれたのも彼だ。
 余談になるが、都職員のちょっと変わった彼は、中国語学習のきっかけが「僕を振った彼女が中国語を話せたんです」と飲んだ時に言っていた。それを聞いて、僕は何となく、男としての彼の気持ちが理解できた。彼はまだ独身で中国語学習を続けている。
 そんなことで、僕は先月の文庫化スタートに合わせて「Club楊令伝」に登録してしまった。
 だから、文庫本の発売日になると北方謙三からのメッセージがメールで届く。これがまた、なかなか考えさせる内容なので、「集英社の商魂たくましさ企画」と知りながらも、メッセージを楽しみにしている。
 そのメッセージが届いた。


北方謙三からのメッセージ

 おい、君はしっかり眼を開いているか?
 こんなことを言うのも、俺は最近、自分が目を閉じてばかりいるのではないかと、ふと不安になるからだ。
 なにもこの世のあり方について、なにか叫ぼうというわけではない。
 せいぜい、自分自身を見つめているかどうか、忘れないでいたいのだ。
 楊令伝第二巻が出た。
 これを書いていたころ、俺は間違いなく眼を見開いていたと思う。
 若いころの怒りさえも、時に思い出すことがあったのだよ。
 それが、書くエネルギーになっていた、とも言える。
 いまだって、眼さえ見開いていれば、という気はある。
 見たくないものは、見ない。見たくない自分も、見ない。
 そんな人生になっていたらどうしよう、という恐怖は、それでもたえずある。
 なあ、君とは作品を通して繋がり合っている。
 俺の眼が閉じていると思ったら、俺になにかを伝えてくれ。
 それも友情だ、と俺は思っているよ。またな。



文庫本発売は毎月1巻のペースなので、先を急がず、じっくりと、気分転換も兼ねて読むことにしている。(実際、登場人物が多いし、地名も人物名もなかなか憶え難く、目次あとに付いている登場人物解説と地図を見ながらと言うのもあるが・・)
 じっくりと味わいながらの読書を、誰か忘れたが「高級ウイスキーをなめるようにページをめくる」と表現していた人がいた。この文庫『楊令伝』読破を僕はそれでいこうと思う。