原田マハ著『板上に咲く』を読む

 新聞の書籍広告の原田マハ3年ぶり長編アート小説がついに単行本に!」という文字が飛び込んできた。

     

 そしてネット検索した書籍説明には、
──
「ワぁ、ゴッホになるッ!」
1924年、画家への憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功
しかし、絵を教えてくれる師もおらず、画材を買うお金もなく、弱視のせいでモデルの身体の線を捉えられない棟方は、展覧会に出品するも落選し続ける日々。
そんな彼が辿り着いたのが木版画だった。彼の「板画」は革命の引き金となり、世界を変えていくーー。
墨を磨り支え続けた妻チヤの目線から、日本が誇るアーティスト棟方志功を描く。
──
と、書かれている。

 原田マハさんは、自身がキュレーターやカルチャーライターとしての経験もあり、美術に造詣が深いこともあって、原田マハだからこそと言える、史実を基にして深みのあるアート小説の数々を生み出している。
 アート小説では、ゴッホの壮絶な人生を描いた『やゆたえども沈まず』や、アート史上最大の謎とも言われる「ゴッホの死」を題材にしたアートミステリーリボルバー、国連本部のロビーに飾られていたピカソの名画「ゲルニカ」を題材にした『暗幕のゲルニカアンリ・ルソーの絵画を題材にした『楽園のカンヴァス』、松方コレクションを題材にした『美しき愚かものたちのタブロー』など、僕は感動した原田マハさんのアート小説として記憶にあるし、読み終わって期待を裏切られたことがない。
 今度は、「版画家の棟方志功か」「ゴッホになるッ!と言って、ゴッホを超えて、世界のMUNAKATAになった棟方志功」が題材。これは、早速読もうと思った。

 この物語も、僕の期待を裏切らなかった。
 妻のチヤの献身的な生き方が凄い。棟方を信じ、棟方が目指すものに、何があっても最優先する姿。このチヤがいたから「世界のMUNAKATA」になったと納得する内容だった。それは、ゴッホを誰よりも理解し支え続けた彼の弟・テオにも通じる生き方なのだ。

 そう言えば、世界的な植物学者・牧野富太郎博士にも、彼を支えた妻・壽衛(すえ)がいたし、偉人の陰には必ずそれを支える人が寄り添っている。

 機会を見つけて、棟方志功を見いだした柳宗悦が創設した、都心の駒場にある「日本民藝館」に行ってみようと思った。